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あなたに会えたから 14
莉音side
「歌手かぁ…でも現実問題無理じゃないかな…俺かっこよくないし」
あ…男の子か…
子供とは思えないくらい落ち着いた声でそう話す彼がなんだか可笑しくて思わず笑った
「お前子供らしくないな…現実問題って…子供は夢を追うもんだ」
顔が見たいな…そう思い自分がいつも使っているピンを前髪に差してやった
「何?」
見えた顔に思わず息を飲んだ。相当な美少年だったから。
「やっぱり…お前可愛い顔してるじゃん」
「可愛い?俺男だけど…」
不貞腐れながらそう答える彼が可愛くて仕方がない。
「そんなの見ればわかるよ。でも可愛い」
「えぇ…」
とても嫌そうに顔を歪めた姿さえ可愛い…
でも落ち込んでいそうだったから…
「10年くらい経てばかっこよくなるんじゃない?」
「カッコ良くなりたい…お兄さんみたいに…」
「ははっ。ありがとう」
俺はカッコ良くなんて無いよ。まだ昔の思いを引きずるような女々しい奴だから…
「いつここで歌ってるの?」
「学校が休みのとき…土曜日はいつもいるよ」
「また聞きに来てもいい?」
ぱぁーっと花が咲くように笑った彼が大きく頷いた。本当…可愛い…
「名前は?俺は立野 莉音」
「霞 桔梗です」
「桔梗ね。よろしくね」
「うん!!」
頭を撫でてやると
「莉音…子供扱いしないでよ…」
生意気にそう言うけれど手はどけられなかった
それからなずなさまと旦那様が一緒にいられる日は桔梗の元へ通った
彼の歌を聞いていたら心が洗われるようで…そんなことを繰り返していたら気付けばなずなさまへの想いは薄れていた。
桔梗には感謝だ
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