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あなたに会えたから 21

莉音side 当日会場につき見渡すが桔梗の姿が見つからなかった やはり来ていないのだろうか… 「あ!立野先輩」 声のした方を振り替えるとそこには華陵院さんが立っていた 「お久しぶりです。華陵院さん」 「先輩…それ…やめてください。何だか変な感じなので…保科さんの代理で?」 「そうそう。いやぁ。流石に兄の取引先の人にそんな…ねぇ?」 「いいですよ。気にしすぎです」 それから他愛ないことや仕事の話をし別の奴に話し掛けられた朝陽を見送り凛ちゃんを探す。直ぐに見つけられた。 「明けましておめでとうございます」 「あぁ!りおくん。明けましておめでとうございます。お久しぶりです。今日はりおくんが来てくれたんだね。京介は仕事?」 「保科がどうしてもこられなくて…申し訳ございません」 「なぁに?改まって。気持ち悪いよ」 「お仕事ですからね」 「真面目ねぇ。兄弟揃って。私たちの仲なのに」 兄と凛ちゃんは幼馴染だ。 「ゆっくりしていってね」 「ありがとうございます」 その後は俺を知る人達が数名挨拶に来た。 兄に言われていた人には皆挨拶が済み会場を後にしようと目線を移した先に桔梗の姿を見つけた。 とても苦しそうな顔で朝陽と相馬くんを見ていた。今にも大きな目から涙が落ちそうだ… 急いで歩みを進めた。近づくにつれ懐かしさと温かさに包まれる気がした あんなに幼かった桔梗が大人になりこんなに綺麗になって… でもまだどこか幼さも残るその顔に似合わない切なげな表情に息を飲んだ。 まるであの日のような… でもまた少し違う感情も混ざりあいながら 「久しぶり。夢叶えたね」 「莉音…」 直ぐにわかってくれた桔梗に嬉しくなり自然と笑みが溢れた 「こんなにおっさんになったのに気付いてくれた。ありがとう」 「おっさんじゃないよ。莉音は今もカッコいい」 「ははっ。ありがとう。でもさ…お前結局…」 「何…?」 「可愛いままだな」 「何だよそれ…少しくらいカッコ良く…」 なったよ…カッコよくなった。 でもやっぱり小柄で大きな目はどっちかと言うと可愛い。 「このピン…俺があげたやつ…」 髪に控えめに差してあるピンを懐かしく見詰めた 「…あ…うん。この道に導いてくれた人の物だから…お守りとして…」 ずっと持っていてくれたんだ… 「役立ったかな」 「うん」 「ねぇ。さっき泣きそうな顔してたけど大丈夫?」 「ん。大丈夫…」 そう答える桔梗は無理して笑っているようだった… 「…じゃねぇな…一緒に外出るか。俺ももう仕事終えたし」 「…」 「よーし。いこう!!」 あの頃のように強引に手を引き会場を後にした。停めてあった車の後部座席に手を離さないまま乗り込んだ 「あ…あの…莉音…何してる人…ですか?」 黒塗りの運転手つきの車だったから驚いたのか思わず敬語になる桔梗が可愛い 「ん?一応社長さん」 「えっ…?えーっ!!」 「五月蝿い…耳元で叫ばないで…」 「ご…ごめんなさい…」 おどおどする莉音も新鮮だった。何だか楽しい 子供の癖にやけに大人びていた桔梗が今は小さな子供のようだ あれ?俺…こんなに誰かと一緒に居て楽しいと思ったのっていつぶりだっけ? 家につき降りるとまた隣で桔梗が固まっていた 「どうした?」 「いや…あの…」 あぁ大きさか… 「あぁ…驚いた?俺も初めてここに来たときは驚いた。まぁまぁ。変な人はいないから安心して」 固まって動けないでいる桔梗の手を取り家へ招き入れた 「うわぁ…すげぇ…場違いな…」 「大丈夫」 そのまま俺の部屋に連れていく。 どの部屋も広くて落ち着かなくて一番小さな部屋を自室にしてもらった。みんなは驚いていたけれどそこに準備してくれもう10年ほどここを使っている 「そこ座って。お茶いれるから」 「あの人たちがやってくれるんじゃないの?」 「お茶くらい俺自分で淹れれるし手を煩わせることはないでしょ」 「そんなもん?」 「そんなもんだよ」 以前大勢いた使用人はみなうちの系列の会社に就職してもらった。同等かそれ以上の待遇で。 一般家庭で育った俺には使用人がいる方が落ち着けなかったから… 今いる使用人たちは庭師と桂さん。掃除だけは流石に一人ではできないからそれをしてくれる数名がまだここにいるくらいで身の回りのことは全て自分でやっている。

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