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あなたに会えたから 29

真っ直ぐ居抜くような視線はきっと誤魔化しなんてきかないかもしれない…でも… 「俺にとって莉音はこの道を目指すきっかけになった…莉音が居なければ俺はここにいません。だから莉音は俺の道標です。だから誰よりも大切で誰よりも好きな人です」 「なら恋愛感情ではない?」 莉音にとって俺は対象ではないのだからこれを伝えてはダメだ 「はい」 「そ。ならよかった」 よかった…? 「莉音は近々結婚する」 「そうなんですね。おめでとうございます」 そんなの知らなかった…莉音が人のものになってしまう…でもそれは仕方のないこと…10も離れた俺。ましてや莉音は会社を背負っている人。相手にされるわけがなかったんだ 「ちょっと…京介さん。何言ってるの…?」 「莉音に縁談の話があるのは事実だ。それを伝えただけ。莉音が唯一気にかかっている桔梗くんには伝えておかないと」 「…えっと…話はこれだけですか?じゃ俺は失礼します」 「ちょっと待って。桔梗くん」 席を立つとなずなさんが俺の腕に絡み付いていた 「何ですか?まだ何か?」 「ねぇ…君…嘘つきだね…」 少し甘い媚薬みたいなしびれそうな声でなずなさんが言う。 その声を聞いてしまえばそこから動けなくなる… 放して…冷静でいられたのにこれ以上は無理… 「ねぇ。桔梗くん…本当にいいの?莉音が人のものになっても?」 「そもそも俺は男ですし年下ですし会社を背負っている莉音と色物の俺では釣り合いません」 「へぇ。なら僕たちのこともそう思ってみてた?京介さんは保科グループの当主で僕は男娼だったんだよ。年だって10違う。僕らのことも否定してるの?」 「違う!そういうことではないです…お二人はとてもお似合いで…」 「なずな。そう苛めてやるな」 「だってそうじゃん」 「ごめんね。桔梗くん。なずなは年齢とか格差にはすごく敏感なんだ。それだけ辛い思いをしてきているから」 「すいません」 なずなさんとお兄さんが釣り合わないなんて微塵も思わなかった。 とてもお似合いで幸せそうで羨ましかった… 俺だって…莉音と…そんな関係になりたかった…でも…それは叶わない願い…

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