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あなたに会えたから 36

「莉音。諦めろ。俺と一緒になった方が幸せにできる。こんな若くて我が儘なガキなんてすぐに忘れられるでしょ」 「はぁ?その言い方はないでしょ。そりゃ夕燈さんからすればガキかもしれない。でも俺を支えてくれたのは他でもない桔梗だしこれはあんたにはできなかった。俺はあなたのことは確かに好きですし一緒にいれば幸せにはなれるかもしれない。でも俺が本当に素でいられて笑えるのは桔梗の前だけです。あなたのところじゃない。一緒にいたいと思うのも桔梗だしあんたじゃない」 「そう?桔梗くんはそうじゃないみたいだけど?すごく苦しそうだし…それか…桔梗くんが俺の嫁になる?」 「何でそうなるんです?夕燈さんは莉音のこと好きでしょ?見てれば解る。莉音は本当に鈍感で自分のことなんて全くわかってないけど…夕燈さんは嘘をつくのが上手だけど同じ人を好きなんだからその気持ちくらいはあなたを見ていればわかります」 「…鋭いね。桔梗くん。 そうだよ。君の言う通り。俺は高校時代から莉音のことが好き。 でも莉音は俺のことただの先輩程度にしか思っていないとわかっていたからそのままにした。莉音を忘れるために莉音に何となく似ている人と付き合ってきた。何度もそんな人と体を重ねてきた。俺は莉音が欲しくてたまらない。 だから今回の話しは願ってもいないチャンス。莉音が他に特別な人いないならこれ以上のチャンスはないでしょ だから莉音頂戴」 「夕燈さん…?それ本気ですか?」 「どれ?莉音のことが好きだってこと?それなら本当だよ。初めて振られたのは高校時代。俺は人生で初めて告白をして振られた」 「告白なんてされてない」 「はぁ…これだもんなぁ…あの頃から真面目で仕事熱心で可愛くて俺が素を出しても根気よく付き合ってくれた。そんな人なんて他にはいなかったから俺は好きになった。 今になって仕事で一緒になって昔と変わらなくて…そこに引かれた。 だからこの縁談の話しを受けた。 でも当の本人は俺なんて仕事仲間でしかなくて…どんなに好きだと囁いても俺の想いには気付かない… その莉音が俺を置いて会いに行ったのは桔梗くんで。連絡とれないって落ち込ませたのも桔梗くん。それ見てたらさ何か逆に応援したくなるよね…莉音のこと。だって好きだから」 夕燈さんは笑っているけれど目は真剣で…本当に莉音のことが好きなんだな… 「桔梗くんはさ本当にいいの?俺と莉音が一緒になっても?」 「莉音の想いが俺にはないのに反対する気になんてなりません。夕燈さんは莉音のこと本当に好きだし莉音はきっと幸せになれる」 「…似た者同士…」 「…本当に…まぁでも今回は莉音が悪い」 さっきまで黙って聞いていたなずなさんと京介さんが二人でため息をつきながら呟く。 夕燈さんと莉音のこと? 「…桔梗くん良く聞いて」 「はい」 「莉音の好きな人は君だよ。さっき言ったでしょ?俺といるのに君の元へ向かったって。一緒にいるとき俺は莉音を口説いてたの。でもさその途中に君の元へいかなくちゃって走り出した。連絡が取れなくなればため息ばかりついて会いたいと言ってた。それを聞いていた俺の気持ちわかる?莉音は俺のことなんて眼中にない。あるのは君。だから莉音の想いは縁談を断りたいからじゃない。気付くのが遅かっただけ。どう?わかった?」 「…俺は…」 「本当にいい?莉音は貰っても。莉音は君のことが好きなのに俺の元へ引き留めても?相思相愛なのに手放してもいい?」 「…本当に…俺のこと…?」 「だからそう言ってる」 「夕燈さんの方が素敵な人なのに俺でいいの?」 「お前がいい」 「…っ…莉音…っ…好きっ…ずっと…ずっと好きだった…俺を選んで…」 「うん。もちろん。よろしくね」 「はぁ…もう…何で敵に塩送らないとならないんだよ…でもまぁ…仕方ないね。条件を満たしたからこの話しは無かったことに。それでいい?京介さん」 「わかりました…愚弟がすいません」 「いいよー。俺モテるしすぐ莉音以上の人見付けるから」 「夕燈さん…」 「ん?なぁに?」 「ありがとう。ごめんなさい」 「最初からわかってたし。気にしないで」 夕燈さんは綺麗に笑った…

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