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初恋 3

二重になった扉を開けるとそこにはあられもない姿の彩とそれに鼻息を荒くした義父がいた。 部屋の中はあの独特な匂いに包まれていた 彩の目は虚で今にも壊れてしまいそうだった… 突然現れた俺たちに義父は驚き腰を抜かした 義母は憤怒し般若の面のような顔をして罵っていた 「蘇芳くん。彩芽さんをお願い…ごめんね…気づかなくて…ごめんね…彩芽…」 はらはらと涙をこぼす義母は本当に何も知らなかったんだと思う そのまま自分のジャケットを彩に掛け自分の自宅へ連れ帰った。 体を清めてやりそのまま寝かせた… おそらく彩は今回だけじゃない…もう随分と長いこと義父に…きっとおかしくなったあの頃から…ずっと…いつもこんなに近くにいたのに気付いてやれなかったことを悔いた 翌日目を覚ました彩はいつもの調子で笑っていた。 泣くことをもう忘れてしまっているのだろう… 何とかしてやりたいが俺にはどうすることもできなくていつもの調子で彩に声をかけた その後彩は兼ねてからの夢だったヘアメイクの世界へ。 仕事も一緒になることが増えた。 あいつは元々何でもこなせるからトップになるのにはそうかからなかった 彩はあれからあの家には戻っていない。そもそもあの家はもう義母が売り払っていた。 義母との関係は良好のようで安堵した

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