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灯火 17

夕燈side 父はとても口下手で愛情を表現するのも苦手だった だから結局朝陽の母には思いを告げられないまま大切な人をまた失くしてしまった 父なりに朝陽を愛したくて接したくて…でも結局うまく行かなくて長い確執が生まれてしまった 他人行儀な朝陽をそれでも支えていたのは間違いなく十夜だ。 朝陽は俺たちには絶対に悩みを言わなかった …幼い頃から成長していってもあの笑顔が自宅で崩れることなんてなかった 朝陽は誰にでも優しい。それは長所でもあり短所でもある。 その性格故に変な人につきまとわれたりすることも多かった。 朝陽は少しそういうことには鈍感で普通に考えればわかることがわからなかったのか抱きつかれても押し倒されても全て許して来た。 流石に車に連れ込まれそうになった時には恐怖を覚え必死で逃げ出して来たみたいだがその時も俺たちに頼ることはなく十夜の元へ向かった その後は十夜と常に行動を共にした。 危なっかしい朝陽をずっと側で支えてきた十夜にとって朝陽は特別で他に変えられるものなんてない。 朝陽だけを見つめ続けて来て朝陽だけを愛して来た十夜の朝陽を手放すという決断はきっと何よりも苦しくて何よりも痛くて何よりも耐え難かったはずだ それでも何よりも朝陽の幸せを願って自分を閉じ込めて自分の苦しさを隠しすぎて己が何を思っていたのかさえわからなくなって…笑って… …ただなんとなく生きている十夜。 その十夜が本当の姿を見せてくれたらどれだけ嬉しいことか… そうすればきっと十夜は美那からも朝陽からも解放される… それをするのはできれば俺がいい… 解放したいと思っているのに自分が朝陽になるなんて… おかしな話もいいところだがそれがきっかけで何か変わればいい… そう思いながら十夜に手を伸ばした…

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