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灯火 26
今日もいつものように夕燈さんの元へ向かう。今日は二人で夕燈さんの店の近くで飲むことになっていた
でも時間になっても一向に現れない。
時間には正確な人だから連絡もないまま遅れることは今まで無い
何かあったのだろうか?
仕事かな?ああ見えて経営者だし…
でも…それにしたって何かおかしい
「マスターちょっと出てくるね」
「はい」
今までの飲食代を一旦払い夕燈さんの店へ向かった
当然ながら電気はついていないけど一応裏へ回ってみる
そこにはおろおろと彷徨う一人の人がいた
店の従業員だ。
「こんばんは。藤さん」
突然声をかけたことに驚き尻餅をつくその人に手を貸し立たせる
「急に声かけておどろかせちゃってすいません」
「十夜さん」
この人は夕燈さんの手があかないときに俺の相手をしてくれる人
「今日夕燈さんと約束してたんですけどまだ仕事?」
「いえ…あの…」
様子がおかしい…
「今日俺…お客さんを怒らせちゃって…収集つかなくなってオーナーが出てきて話をつけてくれて落ち着いたはずだったんですけど…店閉めてここから出たらその人たちが待っていて…オーナーを連れていってしまって…オーナーがここに十夜さん来るかもしれないから今日は会えないと伝えておいてと言われてて…
十夜さん俺…俺のせいでオーナーが酷い目にあってたらどうしよう…」
藤さんは目が赤く腫れていた。沢山泣いたのだろう…
「どっちにいきました?」
指差す方はもう2度と近寄りたくない場所…朝陽が監禁されていたあの廃ビルがあるこの街では異質の場所だった
「わかりました。藤さんはもう帰ってください。月さん心配してるんじゃないですか?」
「でも…」
「藤!!」
「卯月?!」
「あまりにも遅いから迎えに来た…誰?その人…まさか…」
「月さん。お久しぶりです。俺ですよ」
「十夜さん?」
「夕燈さんを迎えに来たら藤さんがいたのでお話ししていただけです。あなたの心配するようなことは無いですよ」
「でも藤目が赤い…」
「早く連れて帰ってあげてください」
「何した?藤に何した?」
「ちょっと。卯月。違うって実は…」
藤さんの旦那さんはモデルの月。心配性で嫉妬深いのだと藤さんから聞いていた
「…そうでしたか…申し訳ありません…俺…藤のことになるとどうしても冷静になれなくなってしまって…ところでどこへ行ったか検討はついていますか?」
「いえ…ただ早く行かないと不味い気がします」
「俺も知り合いを当たってみます」
「顔が広いあなただから有難いです。何かわかったら連絡くれますか?」
「はい」
「ありがとうございます。じゃ俺行きますね」
二人に見送られ指差した方向へ向かう
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