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僕らの間 23

「もう…向こうにいたとき…同じマンションの隣の部屋だったのに」 「?」 「俺の初恋の人が望月なんだよ」 「えー!」 確かに俺は一時期向こうにすんでいた。ほんの数年だが…隣の部屋は日本の人で仲良くしていたのも覚えてる…でも… 「隣は女の子しかいなかったはず」 「あ…やっぱりそう思ってた?」 「はい。それに名字も違うし…」 「父の仕事の関係で向こうでは母の名字を名乗っていたからね」 「そうなんですね…でも…」 「あぁ…お前さ俺の下の名前知ってる?」 「七瀬さんでしょ?」 「隣の家の子は?」 「ナナちゃん」 「俺は向こうではナナちゃんって呼ばれてた」 「え?あのお人形みたいなナナちゃんが…」 「ナナちゃんなら俺も知ってる。写真見せてもらったことあります。でもどうみても女の子だった」 「母親が可愛い物好きで…やたら女の子のものばかり着せられてたんだよね」 「そうなんですね」 「…嶺の初恋は…ナナちゃんだったね?」 「そうだねぇ…」 「宮部…そんな怖い顔すんな…今はそんな感情ないしちょっかいだそうとかはないから」 「…でも…さっき絡めるからって」 「人付き合いが苦手だった俺の面倒みてくれたからお礼言いたかっただけだよ。言葉のあやだって」 「あげませんからね」 「わかってるよ」 「絶対あげませんから!」 「しつこいなぁ~大丈夫だって」 いつものようにヘラヘラ笑う会長の本心なんて俺たちにはわからなかった

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