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年末年始 如月家
「蓮華。本当に俺も行くの?」
「はい。婚約者発表も今日なので」
「まじか…完全に忘れてた…お前が御曹司だったこと…」
「っ…だめですか?やっぱり…」
潤んだ瞳で俺を見つめる蓮華に焦る
「ばっ…そうじゃない…俺親無しだし…学もない…そんな俺が…お前の隣にいて…いいのかって…反対されたら?俺…」
「両親も祖父母も問題なかったでしょ?」
「でも…他の関係者…お前に好意を持ってた人とか…」
「俺に生きる意味教えてくれたのはカイさんです」
「でも…」
ピンポーン
「誰だろ…俺出てきますね」
無言で蓮華の背中を見送る…本当にいいのかな…俺は蓮華じゃないとだめだけど…蓮華には…やっぱり…釣り合わないよな…離れた方が…
「カイリくーん!!」
「ちょっ!!母さん!!」
「うわぁっ!!」
勢いよく飛び込んできたお義母さんを支える
「あけましておめでとう。カイリくん。今日も美人ねぇ」
「あっ…明けましておめでとうございます」
「さぁ行きましょう」
強引に手を引くお義母さんを無下にも出来ず大人しく車に乗り込む
「ねぇカイリくん」
「はい…」
「何て顔してるの?美人が台無しよ」
「…俺やっぱり…」
「やめる?そんなに簡単に諦められるんだ…ならそれでもいいわよ。カイリくんの気持ちはその程度だったのね」
「母さん!」
ゆっくりと車が路肩に止まる…
「その程度の気持ちの子に蓮華はやれない。降りて」
「俺はカイさん以外は考えられない!!」
「でもカイリくんがそんなつもりがないじゃない」
「そんなことは…」
「俺には蓮華しかいません。…俺はこの先蓮華以外愛するつもりはありません」
「カイさん…」
「ねぇ。カイリくん」
「はい…」
「話してなかったわね。私もあなたと同じ。親はいない。学校だって行けなかった。私にはあの人しかいなかった。そりゃ回りの人にひどいこと言われてきたしバカにされてきた。私なんかここにいたってあの人のためにはならないって思ったことも一度や二度じゃない。でもね私はあの人の側にいられるならどんなことだってするって決めたの。だからここまできたし蓮華だってこんなにいい子に育った。学なんてそんなの必要ない。側にいたいかいたくないかそれだけ。どれだけでも周りの心ない言葉や行動を耐えられるか。それだけ。苦しくても蓮華から逃げ出さないなら必ず好転する。蓮華のこと本気で愛しているならどんなことも耐え抜く信念は曲げてはだめ。その自信がないならば降りて。そこまでして蓮華の側にいなくていいのならここで降りて」
「…カイさん…」
「俺は…蓮華の側にいたい…誰にも渡したくない…」
「じゃあ。パーティー出るわよね?」
「はい」
「よーし!!じゃいこっか。この日のためにカイリくんの衣装たちを用意してきたの!!早く着てもらいたい!!」
あまりの変わり身の早さに俺も蓮華も戸惑う…
「もうね。カイリくん美人さんだから着て欲しいものが沢山あったのよ!!勿論今日のスーツでも全くもって問題ないんだけどね」
ゆっくりと如月家に到着した車からお義母さんに手を引かれ降りる。長い長いアーチを抜けて部屋の一室に通されそこであれやこれやと着替えさせられる
「ねぇ。蓮華」
「何?」
「カイリくんのこと離す気は…」
「あるわけない。もしカイさんのこと本当は受け入れられないというなら俺は如月を捨てる。ここよりカイさんと一緒にいたい」
「ふふっ…やっぱりお父さんとそっくりね。お父さんもそう言ってくれた。お祖父様もね」
「あの…出来ました…」
「うん!これでいいわね」
「ここにいたのか」
「お義父さん。明けましておめでとうございます」
「おめでとう。カイリくん。やっぱりよく似合うね」
「でしょー?やっぱり美人よねぇ」
「お前には負けるけどね」
「もう」
「バカップル…」
「さぁ。広間へ向かおうか」
これからこうして蓮華の側にいればいろんな目にさらされる。悪意あるものも含まれるだろう。
これから先どんなときも俺の側にはいつも蓮華がいて欲しい。
その気持ちだけ持ち生きていく。
「カイさん」
「ん?」
「愛してます」
「蓮華。ずっと側にいてね」
「カイさんが嫌でも離れる気はありませんから」
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