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揺れる 5

この辺りは民家もなく街灯もない。とても静かなところを父は気に入っていた。 「静かですね」 食事を終えソファーで寛ぐ。何もしなくてもただこうしてせいくんと同じ場所にいて同じ空気を吸って…ただそれだけで幸せで… でも来年の今ごろは家族が増えている。どんな風に変わるんだろう…こうして幸せでいるのかな? それとも… 「ねぇ。せいくん。話があるんだけど…」 「はい」 僕の顔をみてせいくんがふっと笑みを消した…意を決して言葉を紡ぐ 「あのね…僕…赤ちゃん出来た…」 「え!!!」 心底驚いたように…そして…とても複雑そうな表情でせいくんがこちらを見た…その顔に一抹の不安が過った… 「…喜んで…くれる?」 聞かずにはいられなくて… すると表情が一変し満面の笑みでこちらを見た 「はい!!わぁ…俺たちの…子供…」 喜びを噛み締めるように少し目を潤ませながら僕を抱きしめてくれた 「ん…」 「朝陽さん?」 僕の考えを伝えないと… 「あのね…僕…仕事…休もうか辞めようか悩んでいて…」 どうせいつかは話したいこと。せいくんはどう思う?… 「そうですね…一先ず休業してそれでやっぱり仕事続けたいなら生まれたあとにやればいいし子供と一緒にいたいのなら辞めたらいいと思います…俺としてはすぐに休んで欲しいです…男の妊娠はリスク高いし…」 それなら… 「すぐにお休みしていい?」 「はい。養えるほどの蓄えはありますし仕事俺頑張りますから!!」 「じゃあ…甘えてもいい?」 「はい。任せてください!!朝陽さんはずっと頑張ってきたのだから休んでもバチは当たりません」 少しの不安が晴れていくようだった。怖かった…仕事続けて欲しいって言われたら…素直にそれを聞いたら…この小さな命は育てるのかな?って。ほっと息をついた 「ふふっ…せいくんが喜んでくれて良かった」 「そりゃあ嬉しいですよ!!」 「僕もとても嬉しい…」 ホッとして涙が溢れるともう一度せいくんは抱き締めてくれた 「みんなで幸せになりましょうね?わぁ…とても楽しみ。予定日はいつですか?」 「10月頃だって」 「そうなんですね。ねぇねぇ朝陽さん!!立ち会いしてもいい?」 「え?!」 「だって一緒にいたいから。その瞬間に」 まさかそこまで言ってくれるなんて…嬉しかった 「お医者様に聞いてみるね」 「はい!!最高のバレンタインのプレゼントです!!無理だけは絶対しないで!!」 「うん。わかってるよ」 バレンタインだと言うことなんてすっかり忘れていたけれど僕にとってせいくんの最高の笑顔がプレゼントになった

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