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揺れる 16

安定期に入り少し体を動かした方がいいと思い近所を散歩していた いつもと同じコース。 いつもと変わらない風景の中を歩く。 休憩に使う公園のベンチに腰掛け少しうたた寝してしまったようだ… 風が心地よくて…どのくらいそうしていたのだろう 不意に声がかかった 「あの…大丈夫ですか?」 「ん…大丈夫です…」 「送りましょうか?」 「大丈夫ですよ。ありがとうございます」 「あの…華陵院 朝陽さんですよね?」 「…はい」 「俺…大ファンなんです。握手してください」 「はい」 「ありがとうございます。あの…妊娠中なんですよね」 「えぇ…」 「お体気を付けて下さいね」 「ありがとう。では失礼しますね」 立ちあがり彼に背を向けた。すると彼は乱暴に僕の手を引きいきなり抱き締めた 「ちょっと…何ですか?」 「子供生まれたら戻ってきますか?それとも引退しますか?」 「まだわかりません。」 「なら…」 ずるずる引きずられていく。そして車に乱暴に放り込まれた… 「いたっ…」 「戻ってこないなら俺がお腹の子殺してやる…」 さっきまでの人の良さそうな顔はなく醜く歪んでいた 長いことこういうことはなかったので油断しきっていた… どうしよう…連絡しようにもできずただじたばたもがく パシッ… あまりにも暴れるからか僕は叩かれていた 「大人しくしていてください」 そういいながら彼は器用に僕の腕を後ろ手に縛った。両足もきつく縛られ動けない… ニヤリと彼は笑う。 そして車が発進した 「どうして…こんなことを…」 「俺はあなたの演技が好きです。それなのに子供ができたからって引退なんて許せない。これからもあなたを見ていたいのに」 こんな感情を抱く人も世の中にはいるんだ… 「俺はね。華陵院さん。貴方が憎いわけではない。一ファンでしかありません。でもね。俺と同じ気持ちの人は多くいます。だから俺が代表でみんなの望みを叶えます」 「これは犯罪になりますよ?貴方の人生を壊してしまう。だからやめてください」 「俺のこと心配してくれるんですか?優しいですね。でも…やめませんよ」 僕の声は届かない… このままではこの子が… 「さて。着きました。運びますね」 大きな屋敷… 「少し眠っていてくださいね」 そういうと僕は気絶させられた… 次に目を覚ましたときはとても綺麗に整頓されているベッドルームだった ベッドに僕は拘束されていた… 「すぐ終わりますからね」 彼の手には医療器具が握られていた 「やめてください…やめて…」 「大丈夫ですよ。怖くないですよ。痛くないですよ」 どんなに優しく言われても恐怖しかない 僕とせいくんの大切な子供なのに… きつく目を閉じる…誰か助けて

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