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第2話
追ってくる彼らを見ながら雪は更に自問自答する。
なぜ自分は今、肉食組の教室棟を駆けているのかと。
草食組の生徒達はよほどの用事がない限り、好んでこの棟にはやってこない。
理由は簡単、明確だ。現に今そうなっている雪のように狩りの対象として追い回されることがあるからだ。
彼らは常に草食組と争うための理由を探している。
そうして草食組を追い回したり、時には暴力を振るって、持て余す若い本能の力を発散するのである。
それがこの閉鎖的学園で唯一の、彼らの楽しみであり、悪趣味な娯楽でもあった。
草食組の自分達からすれば、命をとられるまでには至らないものの、肉食組に追われるストレスは半端じゃない。
万が一捕まってしまえば、服を剥かれて噛みつかれるに違いない。
あちこち傷つけられた挙句、金まで巻き上げられたっておかしくない。
しかもこんなことはさも当たり前だと言わんばかりに、この学園の教師は見て見ぬふりをする。だから教師は助けを求めたところで当てにならない。
なぜならば、この学園に存在するヒエラルキーを保つことで、学園内の秩序が保たれていると信じて疑わないからだ。
逃げる?くその役にも立たない教師に助けを求める?それとも戦って自分の身は自分で守る?
何にせよ、雪の力は決して彼らに敵わない。それは見た目や匂いに大きく体現されているから本能でわかるのだ。
ならば、せめて逃げて彼らを撒くしかない。
それにしたって度を越している。
3対1だ。3人もの肉食組に取り囲まれたら……と考えるだけでぞっとする。
大きな恐怖を抱えたまま、逃げ惑うこちらの身にもなってほしい。
「っていうか、授業さぼったらそれはそれで怒られるし、ほんと勘弁してくれぇっ」
教室棟で逃げ惑い、授業の邪魔でもしてやれば、見かねた教師が思い腰を上げて逃がしてくれるかも。
それとも森に逃げ込んで、本格的に彼らから目をくらますか。
どちらがいいのか考えあぐねていると、後方からスッと通った力強い声が通路の壁に反響する。
「おい。授業中だぞ。遊びは終わってからにしろ」
「さ、山王会長……!」
「すいません!生意気な奴がいたんでちょっと脅かしてやろうかと……」
雪は廊下を曲がった先で黒い耳をピンと伸ばし、会話を盗み聞く。
(はぁ~!?元はと言えばそっちが悪いんじゃねぇか!人の昼飯にケチつけやがって!)
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