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第4話
「じゃあ迷子か何かか?……まぁ大方あいつらに追い回されでもしたんだろう。知っていると思うが、ここは肉食組の教室棟だ。お前みたいに弱そうで旨そうな匂いをぷんぷんさせてる奴がこんなところへ来たらどうなるか、大体想像つくだろう」
「……」
悔しくて仕方ないが雪は何も言い返すことができない。
雪の様子を見ていた山王は呆れた口調でそう言い放ち、大きく溜息をついてみせた。
「ただでさえ草食組からの苦情が絶えないというのに、ここでの学園生活はある程度の距離が必要だということを心得ておけ」
山王は雪を上から威圧的に見降ろして、雪に非があると言い放つ。
何も知らないくせに、よくまぁそんなことをぬけぬけと言えたものだ。
雪の心にピンと張っていた恐怖の糸が切れ、そこからどんどん怒りが溢れた。
「お……俺は悪くない……!も、元はと言えば、あ、あいつらが俺たちの昼飯を見てまずそうだって……」
「……」
「思わず俺も言い返した。く、臭そうな肉……って……」
「で?」
「そしたらあいつら急に俺を追いかけてきやがった!俺、ウサギだからあいつらじゃ絶対追いつかない筈なのに、しつこく追いかけてきて……。気付いたらこっちの棟に……」
山王は黙って雪の言葉に耳を傾ける。
肉食組の大将はこっちの話をちゃんと聞いてくれるのか、と雪の荒くれた心も少しだけ穏やかになりかけたその時。
「バカだなお前」
冷や水を浴びせるような物言いに雪の思考が止まる。
「……は?」
「あいつらはお前をただ追いかけていたわけじゃない。お前がこっちの棟に追い込まれたんだ」
「え?そんな筈……」
「狙った獲物を自分のテリトリーへ追い込むのは狩りの基本。そこからがあいつらのお楽しみだったというわけだ。それに気付くことなくあいつらを撒こうとやみくもに走っていたお前は、あいつらの策にまんまと嵌った……。そんなところか」
「……」
そう言われてみれば、なぜこっちの棟へ逃げ込んでしまったのだろう。
雪は首をひねるが、考えれば考えるほどわからない。本当に山王の言ったとおりなのだろうか。
「納得いかないって顔してるな。まぁいい。こんなところに座りこまれても迷惑だ。とっとと草食組の棟へ戻れ。ここに居れば、またさっきのような目に遭っても仕方ない」
言われなくても帰ってやるよと、雪は心で悪態をついて立ち上がろうとした。
「……、あれ……?」
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