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第7話

びくびく、おどおどした雪の態度は主に肉食系獣人達の血を騒がせるらしく、小学生だったころは子供にありがちな意地悪が、中学生に上がるころには何故か身体を触られたり、下着を盗まれたりと、性的ないじめへ徐々に変化していった。 肉食獣人への不信感はより一層募るばかりだった。 しかしそんな雪にも信頼のおける肉食の友人がいた。 狼を始祖に持つ男友達だった。親友と呼んでもおかしくないくらい一緒に行動し、よく遊んだ。彼は優しい性格でとても紳士的だった。 そして中学三年の夏休み、雪は突然その男友達に裏切られたのである。 いつものように部屋でゲームをしたり漫画を読んだりして遊び、何がきっかけだったのかは覚えていないが、ベッドでじゃれていた時のことだ。 ふざけていただけだと思っていたのに、そいつはいつしか鼻息を荒くして雪を組み敷いた。雪の柔い白い肌に犬歯を突き立て、噛み跡を舐め、雪の身体を直に弄った。 しかし咄嗟に放った雪の悲鳴に驚いて、狼のしっぽをふさふさと揺らしながら、弾かれるようにして帰って行ったのを覚えている。 忘れられない非常に苦い思い出だ。 雪はその時悟った。草食と肉食は相容れないものなのだと。 しかし世間は平等を訴え、その風潮で肉食も草食も平等に扱う学校が多かった。 そんな中でこの学園は寮も教室棟も完全に区分けされている。 だから雪はこの学園に進学したのだ。 それなのにどうしてこんな目に遭わなければならないのだろうか。 山王はじっと雪を見詰めている。 何も答えない雪をどう扱えばいいのか悩んでいるようだった。 山王の手がゆっくりと持ちあがったのを見て、雪は反射的に身体をぎゅっと縮こめた。 同時に山王の手もぴたりと止まる。 「大丈夫だ。何も怖いことはしない」 「……」 山王の手はゆっくりと雪の髪へと伸び、黒い毛で覆われた長い耳をすっと撫でた。 「怖くない。大丈夫……」 まるで小さな子供をあやしているかのように柔らかな声で威圧的な空気は徐々に緩和された。 大きな手は優しく雪の耳を上下に何度も滑る。 そうされているうちに、雪の緊張と警戒心が解け、身体の力も次第に抜けていく。 耳の根本を擽る様に撫でられると、身体がぴくんと小さく跳ね上がり、下腹の辺りがきゅうっと絞られるような感覚に襲われた。 「ん……っ」 変な感じだった。でもとても気持ちがいい。

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