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第13話
小さく身体を震わせる姿が山王の目にどう映るのかも雪は知らずに、尾てい骨にある小さく丸い尻尾を左右に揺らした。
見方によっては山王の腕の中でぴくりぴくりと身体を震わせもぞもぞと尻を振る、発情したウサギのようにも見えるだろう。
「す、すまんっ。大丈夫か……?その気になってしまったのなら謝る。そのまま授業に戻れない状態ならば、すぐに戻れるように手助けしてやってもいい。その……あそこは辛くないか?」
コクリ……と山王が生唾を飲み込む音が聞こえた。
「あそこ……?」
「いやっ、なんともないのならいいんだ。忘れてくれ」
そう言いながらも山王の雪を抱く腕の力は弱まるどころかますます強くなっていく。
ぎゅっと抱きすくめられ、強がり続けてきた雪だが、ぎくりと身体が恐怖で強張った。
雪のこれまでの経験上、この流れに呑まれたら服を剥かれて牙を立てられると本能が警告する。
「……は、離せよっ!今すぐ俺から離れろ!!離れないなら、てめーのタマを思いっきり蹴っ飛ばすぞ!!」
「ん?タマ?」
愛らしい雪の口からどんな言葉が出ようとも、山王は動じない。むしろ笑顔でそれは何だ?とばかりに聞き返してくるとは、さすが肉食組の会長だ。
居てもたってもいられなくなった雪は渾身の力を込めて腕を突っ張らせた。
山王の拘束からやっと抜け出し自由になったその手で山王の顔をぺちんと引っ叩く。
「……?」
そこで山王はハッと我に返ったようだった。
「離せって言ってんだろ!なんで俺を抱き締めるんだ!いくら肉食組の会長だってこれ以上やるならセクハラで訴えるぞ」
「セクハラ?」
セクハラということばに山王の金の耳がピンと張ったのがわかった。
きっと会長にとってセクハラという行為は同性相手と言えども禁忌な行為なのだろう。
会長の座を追われるか、それだけに止まらず、停学か、はたまた最悪の場合退学もあり得る。
雪は立場が一転したのだと早々に気付き、ほっと安堵の表情を浮かべると同時に、にやりと笑う。
「そうだろ。俺が嫌がってんのにエッチなことしようとしただろ、山王会長」
雪の言葉と同時に山王の腕が完全に雪から離れ、行き場をなくしたその腕が滑稽に思えた。
「誤解だ……」
「わかったよ。誤解ね。別にいいよそれでも。俺の要求を呑んでくれれば」
「要求?」
山王はすっかり項垂れた様子で雪を見詰めた。
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