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第14話

「俺の友達に謝罪してほしい」 「謝罪?」 「そうだ。元々はそっちが悪いんだ。優也の食事をバカにするから……。食堂は共用だろ。俺達草食組だってゆっくりおいしいもの食べて休憩したいのに、いちいちつっかかってこられても困る」 事実、あんなに美味しかった人参のグラタンが一気に味気なくなって、険悪な雰囲気に包まれ雪と優也の食事は台無しにされたのだ。 食の好みはそれぞれあるに決まっているが、そこをとやかく人から言われる筋合いはない。 いくら肉食組が強い力を持っていようとも、草食組をそんなことで脅かすなんてことはあってはならないことだ。 「そうか。お前が追われた原因はこちらにあるんだな。わかった。謝罪はしよう。ただ一つ言わせてもらうが……」 「……?」 「今後は肉食組からケンカを売られたとしても、一切買うな」 会長自ら謝ってくれるのか、と感心したのも束の間、雪は山王の命令ともとれる言葉にぴくりと耳を動かした。 「なにそれ。もしかして俺じゃ勝てないから肉食組を相手にするなとでも言いたいのか?」 雪は追われた挙句、山王の威圧的なオーラに腰を抜かし、肉食組と関わることの恐怖を学んだというのに、遠まわしに‘’お前は弱い‘’と言われていることが気に入らない。 山王の言っていることは尤もだと本当はわかっている。 しかしまたしても、ちっぽけなプライドが邪魔をしてそれを認めることができないのだ。 自分は弱くない。気高く強い脚の速いウサギ人間なのだと、思いたかった。 無意識に下唇をぎゅっと噛む雪を山王が見詰めてゆっくりと口を開いた。 「いや……。バカの相手をする理由がないだろう。余計な労力を使うだけだからな。だからバカには関わるなという意味で言ったんだ」 「……な、なら、いい。わかった」 気まずく変な雰囲気だと感じたのは雪だけだろうか。 雪はてっきり自分の弱さを指摘されるものだと思っていた。しかし山王は雪の想像とは違う返答を寄越してきた。 隙あらば噛みついてやると思っていただけに毒気を抜かれた思いだった。 「よし。じゃあ行こう」 「え……何その手」 雪の目の前に山王の手が差し出される。 「草食組の教室棟へ着くまではお前の身の安全は俺が守らなければならない。お前は目を離せばすぐ道を外れて暴走するからな。信用できん」 「それにしたって子供じゃあるまいし」

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