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第20話
食堂は学園敷地内のちょうど真ん中にある。
体育館、講堂、その他専門的な使用用途を要する教室が収められている棟の1階に食堂があった。
食堂は肉食も草食も関係なく、全生徒が一緒に利用できるため、かなり混み合っている。
そして共同利用のはずなのだが、食堂の真ん中にある誰も座らないテーブルを皮切りに、肉食組と草食組とで生徒達が二分されているのだった。
しかし、ここが肉食と草食を繋ぐ唯一とも言える憩いの場でもあった。
雷太はさっと草食組の生徒達へ視線を走らせる。
混んでいる中に、少し余裕のあるスペースを確保している2人組を見付けた。
居た。間違いない、雪だ。
食堂の端の席で黒い長耳をひょこひょこ揺らして隣に座る友人と楽しそうに食事をしていた。
雪も小柄だが、隣の生徒も同じくらい小柄に見えた。頭には巻貝のような小振りな羊の角が生えている。
「あれは何気なく周りの生徒達にカバーされてるみたいですね」
「そうみたいだな」
不自然に空いたスペースの中、談笑する雪とその友人。
その周辺は隙間なく大柄な生徒達で埋まっている。
「もしかして生徒会会議なんかで掛け合わなくても黒兎さんの件は解決済みなんじゃないでしょうか」
「……」
漠然とそうだろうかという疑問が生じる。
野生の勘か、それとも雄の本能か、雷太には雪の周りを固めた生徒達が単なる護衛には見えなかったのだ。
しかし紅の言うことは当たらずと雖も遠からずと思えた。
同時に雪に対する興味がむくむくと湧き上がり、雪の生活環境がどうなっているのか非常に気になった。
雪達が居る席の対面席が2席も空いている。
(ちょうど俺と紅が座れるな。いやしかし……)
ここで自分が食堂の境界線を踏み越えた場合、どんなリスクがあるだろう。
これまでこの食堂で保たれてきた秩序を乱すことにはならないか頭の隅で考えるが、視界に移る雪の黒い耳がゆらゆらと揺れ、こっちへおいで~と雷太を誘う。
「紅、あそこに座るぞ」
「え」
雷太が顎先で雪達の席をクイッと指し示し、宣言すると同時に全身にまた威圧のオーラを纏った。
他の生徒を威圧するつもりは毛頭ないのだが、緊張感からか、どうしてもピリピリとした空気を出してしまう。
「先日の件だが、ちゃんとした謝罪が済んでいない。黒兎の友達も侮辱されたと言っていた。もしかすると黒兎の隣に座る生徒かもしれん」
咄嗟の言い訳としては百点満点だった。
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