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第22話

黒兎の表情や声でわかる。 強がっていても、驚きとその中に少しの怯えが混じっている。 これを見て黒兎を征服したいと思う生徒は少なからずいることだろう。 「な、何の用」 「大事な話しだ。相席してもいいか」 「え……」 絶句してしまった雪を見て、隣の生徒が慌てて口を開いた。 「ど、どうぞ」 「ありがとう」 雷太と紅は雪達の向かい側に同じテーブルを囲んで座った。 雪はびくびくとこちらを窺う姿勢を見せる。 手を伸ばし、怖がることはない、大丈夫だと安心させ、あの長い黒耳を撫でたい不埒な欲が心のどこか片隅で生まれたがそれをぐっと押し殺す。 まずは雪の警戒心を解かなければ。 「紅、野菜のシチューを買ってきてくれないか」 「わかりました。丁度僕も野菜の気分だったので同じものを注文してきます」 「あぁ、よろしく頼む」 この状況で、肉など食べられる筈がない。 雪は肉食系の獣人に襲われて食べられるのではと怯えていることを知ってしまったからだ。 そう考えた雷太なりの配慮だった。 見れば雪も隣の生徒もパンをかじりながら、ほうれん草のグラタンを食べている。 (野菜とたんぱく質は乳製品で摂っているのか) 食の好みは偏れど野菜に糖質、たんぱく質などバランスよく食事するのは生きていくには必要不可欠で、大きく肉食と草食に分類したところで結局は皆雑食だ。 雪は一体どんな環境で育ってきたのだろう。 この学園が人種を完全分離しているとわかって入学したのだろうということは、安易に想像がつく。 けれどそれ以前はどうしていたのか。 小、中学校時代は?幼少期は? こんなにびくびくしながらではこの先生き辛いのではないかと、取り越し苦労かもしれないが余計な心配までしてしまう。 「突然相席してすまないな」 「そ、そうだよ。なんでここにすわ」 「いえ、いいんです。大丈夫です。続けてください」 「あぁ」 雪が喋ると隣に座る羊の生徒が声を被せて雷太に対応する。 羊の方は雷太に怯える様子がない。怖がられてもいないし嫌われてもいないようだった。 一方雪はぶすくれた表情で羊の生徒に身を寄せる。 「先日うちの生徒が数名、黒兎とその友人に暴言を吐いたと聞いた。それはもしかして君のことか?名前は?」 「はい、間違いありません。僕の名前は羊ケ丘優也(ヒツジガオカユウヤ)です」

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