24 / 161
第24話
ミルクの香り豊かな野菜のシチューが熱々の湯気を立てて、雷太と紅の空腹を刺激した。
「いただきます」と合掌し雷太がブロッコリーとスープを一緒に掬いぱくりと口にする。
ごろっとした野菜のシチューだけでなく、どうやら紅がベーコンとコーンのソテーを付け合わせとして頼んでくれたらしい。芳ばしい香りが食欲をそそる。
しかしこれに手をつけてもいいものか。
肉そのものより加工肉の方が雪の目に毒ではなさそうだが、ベーコンだって肉であることに変わりはない。口にするには少し気が引けた。
雪はそんな雷太の食事する様子をじっと凝視するようにして見ていた。
「どうした?」
「あ……いや……。野菜嫌いじゃねぇの?」
「あぁ。特別野菜が好きというわけではないが、野菜も肉も魚も満遍なく食べるぞ。黒兎と羊ケ丘のグラタンも美味そうだな」
「ほんとに?ほんとにそう思う?」
雪がずいっと雷太の方へ身を乗り出す。
「あぁ。美味そうだ」
特別好きではないし、特別美味しそうに見えるわけではない。
しかしここは黒兎と羊ケ丘の為に、美味そうだと言う以外、選択肢はなかった。
「あいつら……優也の食事をバカにして……」
そう言いながら雪が辺りをきょろきょろ見渡し、「あ、いた!」と声を上げ指をさした。
雷太も雪の差した方向へ顔を向ける。
するとその先に、先日雪を追い回した肉食組の生徒3人がこちらを見ながら鳥の骨付き肉を頬張っていた。
「おい!!肉食組のお前ら!!見てろよ!」
雪は立ち上がり3人組へ向かって突然声を上げた。
食堂中がざわめきながら雪と雷太達の座る席に注目する。
雪はほうれん草のグラタンが入った器を手に持ち、スプーンで一匙すくった。
その上にはほうれん草の塊がどさっと入っている。
雪が一体何をしようとしているのか雷太には検討もつかなかったが、何かまた大変なことがおきようとしているのはわかった。
異常を察した牛島も心配そうにこちらを見ている。
「ちょっと雪、何してるの!?またトラブル起こすつもり!?」
「優也、ここであの時の恨みを晴らさなきゃ、悔しくてまた眠れなくなるぞ!……おい!お前らがこの間バカにした俺たちの食事を、お前らの会長は好きだと言ってちゃんと食べてくれるぞ!肉しか喰わないその目をしっかり開けて見やがれ!!!」
雪は優也の制止を振り切ってグラタンというよりもほうれん草の乗ったスプーンをこちらへ向ける。
ともだちにシェアしよう!