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第32話

いつもは鼻につくベーコンの焦げた匂いも、不思議とこの時ばかりは香ばしく感じて、雪は躊躇いながらもそのサンドイッチにぱくりと齧り付いた。 「いい子……」 雷太は雪を抱きながらまるで子供をあやしている口調で雪の頭を撫で始めた。 雪の頭を撫でながら、反対の腕はしっかりと雪の胸を抱き留める。 頭を撫でる雷太の手が雪の長耳へと伸びてきて、雪は思わず体を竦めた。 「や、やだ、耳、や……」 「いや?本当に?……ここは?」 悪戯に雷太の手は長耳の付け根へと移動して、びくんと跳ねた雪にきづくと気付くとおもしろそうにカリッと爪を立てた。 「いゃっ……」 下腹の奥がきゅっと絞られ、甘い痺れがじんわり広がる。 いやいやと首を横に振る雪を、雷太は力で押さえつけたまま、長耳の付け根を指先で擦り続けた。 「んっ、んっ、やぁっ」 「黒兎……」 「ひああぁっ……!」 耳に雷太の声を吹き込まれ、ぞわぞわと下肢に集まった熱がぱんっと弾ける。 「かいちょ……う」 雪がはぁはぁと甘く荒い息を繰り返す。 後ろから抱いていた筈の雷太はいつの間にか仰向けになった雪を上から見下ろしているが、逆光で表情は全く見えなかった。 「ん……」 「雪」 「んん……」 「おはよ。すっごいエッチな声出してたけど、大丈夫?」 「え……エッチ……?」 「うん。会長、いやあんって」 「会長……?いやあん……?」 雪の思考がパッとクリアになり意識が浮上した。夢を見ていたのだ。 窓からは朝日が差し込み、優也がベッドの淵に足をかけて体を伸ばし、上の雪を覗いている。 はっとした雪は慌てて体を起こし、布団の中を勢いよく確認した。 「やっちゃった?」 「……」 優也の言葉に雪が無言で頷いた。 スウェットのズボンが濡れている。甘い余韻を残し股間の膨らみがひくんと揺れた。 優也は暗い顔をする雪を問い詰めることなく、雪を風呂へ促し、その間にシーツと布団カバーを洗濯機に放り込んでくれたのだった。 「これは何かの間違いだ。違う、違う、違う……」 雪はシャワーを浴びながら頭をぶるぶる振って呪文でも唱えているかのように同じ言葉を繰り返す。 男子しかいない学園で、しかも相容れないはずの肉食とあんなことを……。 しかも耳を触られただけだというのに夢精しただなんて。 いくら夢だとわかっていても、雪にとってはショックな出来事だった。

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