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第34話
話しが違うということはどういうことだろう。
雪は昨日のことを思い返した。
牛島をはじめとする角持ちの生徒たちがやけに興奮していた様子だったが、特別争いが起きたとか、暴力に発展するような出来事はなかった筈だ。
昼食を食べさせ合い、優也に間接キスだと指摘され、変な夢を見た。
それだけのこと……。
「ほ、ほほ、ほんとに何もないから!それに俺、もうあんなことが起きないように気を付けるから、その……肉食組生徒会の人たちに余計なこと言わないで」
焦ったように早口になる雪を象山は訝しげな表情で見ている。
「本当だな?」
「うん、うん」
雪が首を縦に振る度、シャワーで濡れた髪から水滴が飛び散る。
象山の顔にも水滴が飛び、象山の頬や鼻の先に付いた水の粒が見えた。
しかし象山は気にすることなく話を進める。
「言い辛いんだが、黒兎、お前、肉食の生徒から相当性的な目で見られているぞ。だから気を付けないと……」
「え?せーてき?」
「……」
雪と象山の間に数秒の間が訪れて、雪がこてっと首を傾げた。
「ごめん、何て言ったの?」
「まぁいい。取り敢えず朝食をとってこい。それから、髪をちゃんと拭け」
象山はスラックスのポケットからタオル素材のハンカチを取り出し雪の頭にポンと乗せた。
「お、サンキュー。気が利くね。さすが会長!これ借りとくね」
「あぁ。返却はいつでもいいぞ」
雪は何故か疲れた顔をしている象山に疑問を感じたが、生徒会の仕事が大変なんだろうと勝手に解釈し、ご苦労様という言葉と共に象山へ向かって手を振った。
食堂に入り優也を探す。
優也は上級生数人に囲まれて食事をしていたが、遠目から見てもわかるくらい、何か困っているようだった。
雪はカウンターで待ち時間のないフルーツのサンドイッチを注文し、足早に優也の元へと向かった。
「何してんの」
「あ、雪」
雪がキッと大きな目を鋭くしたからか、その中の一人が「考えといて」と優也に言い残し、「うるさいのが来たから退散退散」と上級生達は首を竦めて戻って行った。
「何あれ。感じ悪い」
「はは……」
優也は乾いた笑いを漏らすが、直後はぁっと大きな溜息を吐いた。
聞けば今度の体育祭で二人三脚のパートナーになって欲しいと数人の上級生から申し入れがあったそうだ。
「優也、困ってただろ」
「あー、わかった?」
「うん」
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