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第35話

「だってさー……僕本当に走るの苦手なんだよね。絶対に足引っ張るだろうし、それになんか……」 「ん?」 「う、ううん、なんでもない」 優也はそれきり黙ってしまった。 もくもくとスープを啜る優也は雪の胸をもやもやさせた。 「いやなら俺が断ってきてあげよっか?」 「……ややこしくなりそうだから、いいよ」 「……そっか」 自分じゃ頼りにならないのかと肩を落とすが同時に疑問も湧いてくる。 「なんで優也なんだろう。二人三脚が全学年合同種目なのはわかるけど、優也じゃなきゃダメな理由でもあんのかな」 「……さあ」 「それに希望だしたところで定員オーバーすれば抽選だろ。だったらそこまでパートナーに拘らなくていいと思うんだけどなぁ」 2か月後に控えた体育祭。 プログラムの詳細はまだ決定していないものの、必ず行われる競技は予めある程度決まっていた。 徒競走、障害物競走、二人三脚、リレー、棒倒しに騎馬戦などの競技は毎年慣行されるいい例である。 「実はね……、さっきここにいた先輩から告白されて……」 「え……こ、こくっ、んむぐぐっぅ」 慌てて優也は声を上げかけた雪の口を手で塞いだ。 優也が反対の手でしーっと指を唇に当てると、雪は黙って頷いた。 「告白は断ったんだ。だけど最後の体育祭だから思い出が欲しいんだって」 「……そうなんだ」 優也は小さな声で、しかし淡々と説明する。 自分の知らぬ間に同性からの告白を受け、断り、更なるアプローチに悩む優也が何だか遠くに見える。 優也に対する驚きと寂しさが心に小さな影を落とした。 「黙っててごめんね」 「いや、別に。そんなの人に言うことでもないし……」 「うん。そうなんだけど……」 「優也って相手が男でも平気なの?」 「ううん、平気じゃないよ。僕基本的には女の子の方が好きだから」 「そ、そっか……。変なこと聞いてごめん。そうだ、因みに好きなタイプは?」 質問したことを誤魔化すように更に質問を被せ、雪がフルーツサンドに齧り付く。 優也は雪を見てにっこり笑って言った。 「そうだなぁ。雪みたいに元気で可愛い子がいいな」 「ぶふぉっ……!」 「ぎゃっ、雪、きたなっ!!」 咀嚼中だったフルーツサンドが宙に飛び散り、雪は再びバスルームへと押し込まれたのだった。 もちろん授業の一限目は遅刻である。

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