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第38話
恥ずかしいことこの上ない内容をクラスメイトに聞かれてしまったのだが、聞かれてしまったものは仕方がない。
雪は念の為……と恐る恐る口を開いた。
「まぁ……なんだ、その……、参考までに……、物理的に無理なんだろうけど仮にできたとして、この中で俺とセッ……したい人とかいるの……?」
教室中がしんと静まり返った。
恐らくセッ……ごにょごにょと聞こえたところは皆脳内補完して聞いてくれただろうしここにいる全員が質問の意味を理解している筈だ。
雪は辺りをゆっくり見回す。
「……い、いないよな!そうだよな。変な質問して悪いな!」
頭に手をやって雪があははと笑ったその時、教室の隅にいた5人グループ全員が手を挙げた。
「黒兎には悪いけど、俺らはチャンスがあればヤりたい」
「……!!!」
ぎょっとした。有り得ない。
その前に男と男で何ができるというのだろう。
それを抜きにしたって静観できる話ではなかった。
クラスメイトの素直な欲望に雪は体を硬直させ、ロボットのようにぎこちなく顔の位置を元に戻した。
すると目の前の優也がにっこり笑う。
「だから言ったでしょ」
「嘘だろぉ……」
「嘘じゃないから。あ、ほら、昼休み終わっちゃうよ。早く行こう」
「羊ケ丘、黒兎のこと頼んだぞ」
「任せといて」
雪は何故かクラスメイト達に応援される優也に腕を引かれ、そのまま引き摺られるようにして教室を後にした。
自分は男であり、理想の恋人像は自分よりも小柄で優しくて可愛らしい女の子の筈だ。
しかしそうでない者もいるということなんだろうか?
自分と恋愛したい者がいる?
しかし優也も象山も性的な目で……と言っていた。
恋愛とはまた違うのだろうか。
(どういうこと?)
性的な目で見られているということの意味がいまいちよくわからなかった。
職員室は中央棟にあり、中央棟には食堂もある。
きっとまた肉食組の生徒達と擦れ違うだろう。
揉めるつもりは毛頭ないが優也の心配はそこではないと何となくわかった気がした。
中央棟へ到着するまでの道すがら、草食組の生徒達とも擦れ違った。
(……見られてる?)
優也に忠告された言葉を意識し出した途端、急に他人の視線が気になりだし、時折すごく見られていることに気が付いた。
その視線は頭の天辺から爪の先までねっとりと絡み付くような不快なものだった。
「優也……」
突然不安になった雪は隣を歩く優也のシャツの裾を掴む。
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