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第40話

変なことを考えたせいで雷太の顔を直視できなくなった雪はどぎまぎしながら視線を下げる。 しかし熱くなった頬をさらりと撫でられ、再び雷太を見詰めることになってしまった。 「なんでって、顔が赤い。怒られて不機嫌にでもなってるのかと思ったんだが」 「違うし……」 雷太の指先が雪の頬を上下する。 そっと、鳥の羽のように撫でられて、雪の体に嫌悪や恐怖とは違う、下肢に直結しそうなぞわぞわとした感覚が駆け上がった。 「……っ」 「どうした?」 耳を撫でられた時、尻尾を揉まれた時に感じたあの感覚にとても似ている。 心の奥底で、もっと触って欲しい、と本能が不埒な欲を刺激する。 雪は赤い顔で瞳を潤ませ雷太を見上げた。 「会長の、ゆび……」 「ん……?」 「なんか、やだ……っ」 そう言うや否や、雪は雷太の手をぺしっと叩いて跳ね退けた。 そのまま脇目も振らず職員室を飛び出し帰路を急ぐ。 「雪!」 「……?」 「雪ってば!」 「あ、優也」 顔も体も火照って頭の中は雷太に触れられた感触でいっぱいなり、優也が待っていたことをすっかり忘れていた。 雪は後ろから腕を掴まれ立ち止まった。 「雪どうしたの?」 「ごめん……。俺、優也のこと忘れてた……」 「え?」 優也が目を丸くする。 当たり前だ。自分を心配してついてきてくれて、用事が終わるまで待っていてくれたのに。 その存在を忘れるなんてどうかしてると思われても仕方ない。 「えっと……その……」 優也の困惑した顔を見て申し訳なく思う。 しかしどうしてそんなことをしてしまったのか、説明がつかない。 自分自身、心と体のコントロールも整理もできておらず、何をどう優也に話せばいいのかわからなかった。 遅れて雷太も職員室を退室し、こちらへ向かって歩いてくるのがわかり、雪は優也の背後へ回り、体を隠すように縮ませた。 頬を撫でられただけなのに、頭も心もかき乱され、どんな顔をすればいいのだろう。 「あ、山王会長」 「羊ケ丘か」 雷太がこっちを見ているのがわかる。 優也の影でびくびくとしている自分をおかしな奴だと思っているのだろう。 雪が目をぎゅっと瞑って隠れていると、雷太の溜息が聞こえた。 「どうやら俺は黒兎を怖がらせてしまったらしい。悪かったな、黒兎」 「……」 「そうなの?……雪?」

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