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第41話

「別に怖がってなんか……」 雪は優也の後ろに隠れながらびくびくしているので全く言葉の説得力が感じられない。 「そうなの……?」 事の是非がわからない優也は眉を潜め首を傾げるばかりだ。 「じゃあまたな」 雪と優也のやり取りを見ていた雷太だったが、さっと腕を伸ばし、腕時計で時間を確認すると忙しそうに去っていった。 腕時計一つ見るにしても慣れた動作が雷太の大人っぽさを際立たせ、またそれがいちいち絵になるので目を奪われる。 雪は立ち去る雷太の後ろ姿をぼうっと眺めた。 そんな雪を隣で優也が見詰めている。 「雪、何があったの」 「何も」 「嘘だ。そんな顔して」 「な、なんだよそんな顔って……」 「顔は真っ赤だし、目は潤んでるし、見方によってはやらしい方にそそられるっていうか」 「やらしいって……んなわけあるか!ちょっとほっぺを撫でられただけだ!」 「会長が頬を撫でた?それで雪はそんなかわいい可愛い顔してるの?そっか。そうなんだ」 優也が何かを納得したように頷いた。 「そうなんだって……何が」 「まぁ色々と朝のこととか総合的に見て、雪、恋してるんだね」 「っはぁ!?誰が誰に!?」 突拍子もなく恋をしているんだと指摘され、雪は顔をしかめた。 「雪が会長に」 「は…………」 予想だにしない返事だった。 雪は言葉を出せないまま、口をはくはくとさせている。 (まさかまさか……、そんなことあるはずないっ!!) 「恋じゃなければ憧れてるとか」 違う違うと、雪は優也に向かってぶんぶん首を横に振ってみせる。 「山王会長なら雪を任せてもいいのかな……」 指摘されたことがあまりにショックで、優也の声は雪の耳に届いておらず、雪は垂れた長耳を両手で押さえた。 自分の心はどこへ向かっているのか。 雪自身がよくわからない。 まず同性の肉食獣人に恋をするということが理解できなかった。 思わず守ってあげたくなるような女の子とは全然違うからだ。 (じゃあ何だ?憧れってヤツなのか?) 雷太に会う度、雪の心は平静を失い混乱するばかりだった。

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