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第45話
「冗談はよせ。血生臭いことはごめんだぞ」
「やだな、冗談ですよ。始祖がネコ科のいやしいハイエナなんて相手にできませんって」
「俺の始祖もネコ科だが……」
雷太がじろりと紅へ目をやると紅が面白そうに「すみません」と笑う。
どうやらイヌ科のオオカミである紅とネコ科の獣人は敵対するDNAが組み込まれているのか相性が悪いらしい。
「会長はハイエナなんて小物とは全く違います。あいつらにカリスマ性なんてものは一切感じられませんが、会長は外見も頭脳もカリスマの鏡です。尊敬しています」
「どうだか。しかしお前がこちら側の獣人でよかった」
「どうしたんですか。弱気なんて百獣の王らしくないですよ」
「俺は王なんかじゃない。お前たちの手を借りなければ肉食組の会長など務まらないつまらない男だ」
「またまたご謙遜を」
紅は学園内でオオカミの血を引く者を束ねるリーダー格だ。集団になったオオカミの団結力はとても強く、雷太でも相手にしたくないと思うほどだ。
生徒会へ引き摺りこんで正解だった人材だと思ってよいだろう。
寮へ到着し、そこで雷太は紅と別れた。
寮は学年ごとに階が異なる。雷太は3階の自室へと戻った。
「おかえり山王。役員会おつかれさま」
「あぁ、ただいま蛇塚(ヘビヅカ)」
同室の蛇塚は色白で細く病弱そうなイメージがある生徒だ。
首にヘッドフォンを引っ掛けてベッドで肘をつきながらアウトドアの雑誌を眺めていた。
インドア派に見えてアウトドア好きというのが面白い。
「体育祭のプログラム決まったの?」
「いや、まだだ。来週には決まる」
「そっか。ねぇ、フォークダンスするって噂聞いたんだけど本当?」
「案はあるんだが通るかはわからん。そもそも男同士でダンスなどお笑い種だがな」
「確かに。誰が提案したんだろう……」
フォークダンスが正式種目として決まったら。そう考えると、想像するのは雪のことだ。
きっと可愛らしく長耳を揺らしぴょこぴょこと踊るのだろう。
雪の愛らしい笑顔が脳裏に浮かんだ。
「そうだ。蛇塚は去年の体育祭のこと覚えているか」
「去年?うん。大体覚えてると思うけど……。なんで?」
「草食組の黒兎雪を知っているか?黒兎が体育祭に参加していたか覚えていないだろうか」
「黒兎……。わかんないなぁ。自分が何に出たのかとかは覚えてるんだけど……」
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