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第46話

「そうか……」 やっぱり誰も覚えていないのだろうか。 「体育祭は覚えてないけど文化祭の時は黒兎のクラスでちょっとした騒ぎがあった気がする」 「去年の文化祭か」 「そうそう。そうだ。黒兎のクラスで焼き菓子販売してて、黒兎目当ての客が押し寄せものの数分で商品が完売して店じまいしたーとか……。そんなことがあったっけ」 「……それなら覚えている。あれは黒兎のクラスだったのか」 昨年の文化祭で開催早々に店仕舞してしまったクラスがあった。 売る物もなしに人だかりができてしまい、周辺の混乱状況から事前準備はちゃんとしてあったのかとそのクラスを精査したのだ。 その時雷太も立ち合い、当時の副会長の傍で話をずっと聞いていた。 今になればなぜあそこまで混乱していたのかが理解できる。 雪があの場にいなかったにも拘わらず、雪目当ての生徒たちが後を絶たなかったからだ。 自分の知らないところで雪を巡って問題が起きていたのだ。 来週開催される肉食・草食合同の役員会で、雷太は頼りない雪についてそれとなく注意を促し護衛をつけた方がいいと提案するつもりだった。 しかし食堂で会った時既に、雪の回りは角持ちの草食組生徒達に囲まれ守られていた。 近くには牛島もいた。 牛島個人の私情で動いているのか、生徒会が絡んでいるのかはわからないが、雪の行動を制限するために動きだしたということだろう。 そして体育祭について、雪が去年どうしていたのか知っている者がいないということからそもそも出場していなかった可能性が高い。 病欠でなければ混乱や怪我を避けるため出場させなかったと考えるのが妥当だ。 これを踏まえて今度の会議、鬣犬のことを議題に上げれば、今年もまた雪が体育祭に出られないということが考えられる。 「黒兎の人気は学園内で言えば芸能人級だよね。あそこまで目立つと思うように好きなことはできないんだろうなぁ。ある意味羨ましい気もするけど」 蛇塚は「いいなぁ」と言いながらごろりと寝返りを打った。 (いいもんか) 雷太は考えながら、雪が気の毒に思えてならなかった。 学園行事もまともに参加させられず、食事時まで親衛隊のような護衛に見張られる。 護衛が甘ければくだらない輩に絡まれて、追い回されて。 これでは楽しい思い出を作る筈の学園生活が滅茶苦茶だ。 自分が雪の傍に居れたなら、そんな大変な目には合わせないのに……。 雪への思いは募るばかりだった。

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