48 / 161

第48話

「はぁ……本当に同性好きが随分と多い学園だな。お前まで言い寄られていたとは」 色白で細いもやしのようなこの蛇塚のどこにそんな魅力があるというのか。 雷太は額に手を当て「世も末だ」と呟いた。 「ちょっと……何気に失礼なこと考えてない?」 「い、いや。そんなことは考えてない。それで鬣犬はどうしたんだ」 「俺のことタイプだって言ったけど、同室が山王だって知って「うわっ、めんどくせー」って」 「めんどくせー?なんだそれは……失礼な」 「俺にちょっかいかけようとして山王の存在に気付けば大概そう思うかも。生徒会役員だしさ」 「で、その後は何もされていないのか」 「うん。気が向いたら連絡くれって連絡先だけ渡されたんだけど、こっちから連絡したことは一度もないよ」 「そうか。だったらいいんだが」 同室である蛇塚に特別な感情はないけれど、その相手が鬣犬だと聞けば心配にもなる。 何事もなくてよかった。 「呼び出してあげよっか?この後、大浴場開く時間でしょ」 「ん?」 「呼び出してあげるから大浴場行こう。たまにはシャワーじゃなくてひろーいお風呂で足伸ばしてくつろぎたいしさ。そこに鬣犬先輩が居たとしても学園最強の山王が居れば万事オッケーでしょ」 「いいのか」 「食券1週間分でどう?」 蛇塚は雷太をじっと冷たそうな視線で見詰めてにっこり笑った。 「わかった。頼む」 蛇塚も意外に喰えない奴だが背に腹は変えられない。鬣犬のタイプが蛇塚だということは初めて知ったが、小柄で色白、細身というところだけ見れば、雪と共通している。 それに、烏合の話が本当ならば、水際でどうにかしてでも食い止めなければいけないのだ。そうなる前に打てる手は全て打っておきたい。 誰にも指一本触れさせない。 雷太は心で雪に誓った。 雷太と蛇塚は一度部屋へ戻り大浴場へ行く支度を済ませた。 「鬣犬先輩来るって」 蛇塚が携帯を片手にOKサインを作ってみせる。 なんだかやけに楽しそうな表情が不気味だ。 「蛇塚は鬣犬先輩が怖くはないのか」 「悪い事を表立ってする人じゃないからね。隠密行動なら俺の方が得意だし、いざとなれば体術で絞めることもできるからあまり怖いと思ったことはないかな」 「そうか。体術を習っているのか」 「護身術として身につけさせられたんだけど、体が柔らかいから向いてたみたい」 「なるほど」

ともだちにシェアしよう!