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第52話
学園は基本的に週休二日制である。
しかし雷太のように生徒会やら、部活動やらで、休日でも学園校舎に登校する者も居る。
週末である土曜日、雷太は生徒会室に役員を集め鬣犬についての情報交換を行った。
烏合からは賭けについて探りを入れてもらったが、やはり雪を襲う権利を巡り賭けをしようとしている者達が複数いるということは事実で、それが鬣犬のグループであることは間違いないとのことだった。
「鬣犬先輩の下についているクラスメイトから聞いたので間違いないかと……。そいつも賭けに一口乗らないかと誘われたそうです」
「そうか。賭けの詳細については何かわかったか?」
「はい。体育祭の騎馬戦で一番多く騎馬を倒したグループにその権利が与えられるとか」
「グループで?まさか集団で黒兎を陥れようとしているのか」
(どこまで卑怯な奴なんだ……鬣犬……)
鬣犬だけを相手にするのなら雷太だけでも事足りる。そう思っていた。
しかし自分だけの手に負えない数となれば、ここにいるメンバーにも協力を要請する他ない。
このままでは確実に多数の怪我人が出るだろう。
草食組から警戒されず親しい友人もいる屈狸には、昨年の雪のことを調べてもらったが、やはり去年の体育祭で雪が何の種目に出場したのか知る者は誰もいなかった。
「誰も黒兎のことを知らないんだよ。変だよね。もしかして休みだったのかな」
「病欠、或いは体育祭に出られないようどこかに監禁されていたのかもしれん」
「……あり得ますね」
雷太をはじめ、紅、烏合、屈狸、全員が黙り込んでしまった。
黙ってはいるがいざとなったら全面戦争だと、肉食ならではの好戦的な思考を巡らせている。頭の片隅で拳を交えるシュミレーションをしてしまうのは生まれ持った性なのだろう。
紅には鬣犬グループの動向を注視してもらっていたが、特に何も変わった動きはなかったと言う。
「僕の方は特に何も……。会長は何かわかりましたか?」
「鬣犬と接触できた。万が一のことがあれば、噛み殺すと忠告したが……」
‘’噛み殺す‘’
雷太の口から穏やかでない言葉を聞いたのは、ここにいる3人ともが初めてのことだった。
皆驚きの表情を浮かべるが、そこまで雷太に言わせてしまうほどの相手だ。
鬣犬がいかに手強いか、思い知らされることとなった。
そして雷太は続けた。
「あれはお前たちの手に負える相手じゃない。俺の獲物だ。俺がやる」
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