53 / 161

第53話

雷太の本気を目の当たりにし、3人はただ頷くばかりだった。 「やるなら徹底的にやりましょう」 「そうだね。今後も問題を起こしかねない」 烏合と屈狸が雷太の為に尽力すると誓う横で、紅が何かを思いついたのか「あぁ」と小さく漏らした。 「会長」 「なんだ、紅」 「思ったんですが、会長が黒兎さんに手をつけてしまえばいいんじゃないでしょうか」 「……ん?手をつける……?」 「そうです。黒兎さんを自分のものにしてしまうんです。そうすればその賭けに関わる者が相当数減るはずです」 「なっ……何を言っている!そんなことできる筈がないだろう!!」 紅の言葉を理解するのに数秒要してしまった。 雷太は自分を見て怯える雪を思い出し、そんな無謀なことができるかと狼狽えた。 「いや……でも、それ効果あるよ山王。本当に付き合っていなくても、付き合っている風に装うだけでもいい。平和的に解決できる一番の方法だと思う」 「……それなら草食組会長の方が適任だろう」 「会長それはダメです。鬣犬先輩の企てが草食側に漏れてしまったら、体育祭自体取りやめになるということだって考えられます。そうなると僕達がいかに無能であるか問われた挙句、肉食組全体の秩序が乱れてしまいます。カーストが崩れるんです」 流石は紅だ。一時的な感情に流されず、先のことまで見据えている。 本来ならばそれは自分の仕事なのに。 雷太は熱くなり周りが見えなくなっていた自分を情けなく思う。 「そうか。そこまで考えが及ばなかった。すまない。助言してくれたことには感謝する。だが、この先体育祭までに黒兎とどうやって距離を詰めればいいのか。恐らく俺は嫌われている」 「そんな。会長を嫌う獣人なんてこの学園にはいませんよ」 烏合が慰めの言葉を口にするが、気休めにしか聞こえない。 雪のこととなると気が弱くなってしまう。 紅も屈狸も平和的解決に繋がることだと提案してくれた、‘’雪と付き合ってます‘’計画は実行に移せそうにない。 「僕に考えがあります。会長、明日出掛けましょう。ダブルデートです」 紅が雷太を見てふふふと笑った。 「ダブルデート?」

ともだちにシェアしよう!