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第61話
「……?そうなのか?」
訝しげな顔をする雪を見て、雷太が頷く。
至近距離でこそこそと話しているからなおさらなのか、雷太が動く度、雷太の香りが風の動きに乗って雪の鼻腔に入り込む。
なんとも形容しがたい、所謂オスの匂いなのだが、決して嫌な匂いではなかった。
むしろ少し興奮してしまう。
しかしそれは雷太の香りが原因なのか、それともこそこそと話していた下らない内容が原因なのか、雪には全くわからなかった。
赤い顔で長耳を折り、恥ずかしそうに手で押さえる雪を見て、雷太は微笑み、雪の頭に手を乗せる。
「お前は子供みたいだな」
子供と言われ、いつもだったら怒るところだ。
けれど雷太の手が折り曲げることで露になった長耳の付け根を微かに掠め、雪はそれどころではない。
「ん……」
雪はピクリと体を震わせ、テーブルに手をついたまま腰を僅かにくねらせた。
「かと思えば色っぽい時もあって危なっかしい。人にもよるだろうがこういう状態を性的だと捉えることだってできるし、第三者からは性的な目で見られるということもあるだろうな」
「なんだよ、こういう状態って……」
雪は下腹のあたりをむずむずとさせて、丸い尻尾をふるふると震わせた。
「お前はもう少し自覚した方がいいな。例えば、その脚」
「え、脚?」
「そうだ。同じ男とは思えないくらいキレイで触り心地もよさそうだ。思わず手を伸ばしたくなる」
不意に雷太の視線が雪のハーフパンツから伸びる脚に注がれた。
雷太の眼差しがいつもと少し違う。
そう意識すると脚をすぐにでも隠してしまいたくなる程恥ずかしい。
「それから黒兎の私服はいつもこんなに緩いのか?」
「緩い……?」
「あぁ、華奢だから胸元がこんなに大きく開くんだな」
雷太の手が雪の着ているパーカーの下のUネックシャツに伸びてくる。
胸元の布に指を引っ掛けられて、少しだけ下に引っ張られた。
「わ、何するんだよっ」
「何って。こんなに開いてる服を着ていたら、屈んだだけですぐに胸が見えてしまう。これだって性的だ」
「えっ……」
そんな場所を意識したことはなかったが、雪は改めて雷太の長い指で下げられた胸元へ視線を向けた。
胸と衣服に開いた大きな隙間から、ぷっくりとした桜色の乳首が覗いている。
「やっ、やだっ、この変態っ」
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