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恋人(仮)とデート(偽)
日頃山の中にある閉鎖的な学園に籠りきりだと、久々の外界は結構様変わりしていて驚く。
野菜マルシェもその一つで、訪れるのは数年振りだ。
もともと野菜そのものにこだわりがなく、こうして朝市にまでくることは殆どない。
久しぶりに見るこの市場、規模が大きくなっていて驚いた。
近年は健康志向が高まり、野菜に注目する肉食系獣人が非常に増えているのだと、雷太が今手にしている情報誌にも載っていた。
今回町へ下りてきたのは紅からの提案であったが、それに乗じたことで雪の喜ぶ姿を見ることができたし、計画にはなかったことだが仮の恋人として傍にいることだって可能となった。
仮の恋人関係を築こうと提案したのは自分だが、当初はここまでするつもりはなかった。
しかし雪からの、同性から性的な目で見られていて困っている、という告白により大きく一歩踏み込むことができたのだ。
同性からそんな目で見られて嫌悪している雪にとって、雷太からの提案はあり得ないものだっただろう。
しかし紅が横やりを入れてくれたおかげで何とか丸く収まった。
雪がどうしても嫌だというのなら紅に頼むしかなかったのだろうが、これでよかったのだと思える。
自分の手で同じ肉食組の生徒を管理できるし、不祥事だって起こさせはしない。
しかしそれだけだろうか。
生徒会長としてこの結果が良かったと思っているだけだろうか。
──会長は、そんな目で俺を見たりしてないよな?
雷太の脳内に雪の声が蘇る。
雪に対する興味が一切ないのなら、雪の体に存在する性的な部分を挙げることなどできない筈だ。
しかし怯えたような目でそう問われ、「はい見てます」なんて例え思っていたとしても答えられる筈がない。
(それにしても綺麗なピンクの乳首だった……。乳輪のあたりからほんの僅かだがふっくらとして……)
雷太の視線は無意識に目の前にいる雪の胸元へと移動する。
細い首から繋がる綺麗なデコルテライン。綺麗に浮き出た鎖骨。到底同じ男のものとは思えないほど繊細な造りをしているように思える。
どちらかと言うとやんちゃで奔放な性格の雪にはミスマッチな容姿だが、そのギャップもまた魅力の一つだ。
こうして雪の虜になる輩が増えていくのだろうか。
(いやいや、俺は違う。黒兎を狙うその他大勢と一緒になるわけにはいかん)
違う、違うんだ!!と、ぶるぶる頭を振る雷太を見て雪が雷太を覗き込んだ。
「会長?」
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