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第75話

バッティングに、フリースロー、パンチングゲームに、エアホッケー。 様々なゲームを立て続けに全力で挑んだ結果、どれもこれもが雷太には一歩及ばず、雪は影で唇を噛み歯を軋ませた。 雷太のキラキラとした金の髪と、涼し気な顔がまた、なんだか妙に憎たらしい。 次こそは勝ってやろうと、目新しいアトラクションを探す。 雪がきょろきょろと辺りを見回す横で雷太は腕時計を見て時間を確認した。 「雪、そろそろ帰るか?届け出は15時までしか出していない。バスで戻って、そこから学園までは徒歩になる。帰りは登りになるから時間がかかる」 「えー。もう時間かよ。雷太に何か一つすっきり勝ってから帰りたい」 「そうだな、言われてみれば俺に全敗したな」 「あのさ、改めて全敗とか言わなくていいんだからな」 「事実なんだから仕方ない」 「その言い方!仮にも俺は雷太の恋人なんだからもう少し優しくしたらどうなんだよ」 「いいのか?」 雷太は三角の耳をピンっと張って、じっと雪を見詰めている。 「何が」 「優しくってことは、もっと本格的に恋人のように振る舞ってもいいということか?」 「え、どういうこと?」 「どうせなら、もっと恋人らしく触れ合って、お前にマーキングしたい」 「マーキングって……」 雪の頬が途端にぼっと赤く染まった。 ──マーキング。 過去に学校で習った獣人における第二次成長期とセックスに纏わる内容の授業を思い出した。 獣人の嗅覚は身体能力よりも優れた力で維持されている。 強者の匂いというものは自己防衛本能により、誰でも嗅ぎ分けることのできる強い存在感を放つ。 その匂いを弱者がつけることによって、パートナーの存在を周囲に知らせることもできるのだ。 「マーキングすれば絶対に学園内でお前が襲われるような間違いは起きない筈だ」 雷太は至って真面目な顔で言う。 「で、でもそれって、……そんなことできる筈ない。だって……雷太、俺に興奮したりする?」 「それは問題ない。それより雪の同意を得たい」 「……」 マーキングとは主に男性が女性に精液をかけ皮膚を通し経皮吸収させ、その女性を所有、独占していると知らしめることをいう。 双方互いに同意の上でならば、他所からのアプローチに悩まされることなどなくなるので悪いことではないのだが。 雪は真っ赤になりながら、想像する。 雷太は自分を性の対象としていないと言った。 けれどマーキングはできるらしい。なぜ?

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