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第77話
いつ、どこで、どうやってそれを実行するのか。知りたくて知りたくてうずうずする。
しかし、雷太は道中、全く見当違いなことを話し始めたのだった。
「少し聞きたいんだが、雪は去年の体育祭、どこで何をしていた」
「何突然。去年の体育祭?」
マーキングでいっぱいだった雪の頭に、体育祭という言葉が投げ込まれ、何故突然そんなことを?と雪は首を傾げた。
「そうだ。あれだけ運動神経がよくて容姿も目立つ。ちゃんと体育祭に出ていたならば、俺がお前を覚えていない筈がない。俺だって去年の体育祭は最後の学年リレーで5人まとめて牛蒡抜きにし、大注目を浴びた。暫く学園内はその話題で持ちきりだったぞ。だからお前が俺を知らないというのも不自然だ。だとすると考えられるのは一つしかない。雪は去年の体育祭に出ていない。そういうことだろう」
「確かに……出なかった。けど、それがどうかしたのか」
「どこで何をしていた」
雪の言葉に耳を貸すことなく、雷太はどうしても雪が昨年の体育祭に出場しなかった理由が知りたい様子だ。
「言いたくない」
雪の苦い思いでの一つとなっている昨年の体育祭。運動が得意な雪は、もちろん体育祭を楽しみにしていた。しかし出られなかったのには理由があった。
「なぜだ」
「だって、そんな事話したら、きっと俺のこと嫌いになる」
「簡単に嫌うわけがないだろう」
「でも」
雷太は雪がこれまでに出会った肉食獣人の中でも飛び抜けて真面目で真っ直ぐだ。
品行方正が服を着て歩いているような雷太に、その理由を話すなんて、雪にはとてもできそうにない。
───なぜなら雪は、昨年の体育祭当日、一日中ベッドで眠っていたのだから。
「大丈夫だ。誰にも言わない。約束する」
「……」
雷太は足を止め雪の目の前に立つ。
金の髪の隙間から覗く瞳のブラウンは誠実さを表しているかのように澄んで見えた。
本当に言ってもかまわないだろうか。
しかし一日眠っていただなんて心象が悪すぎる。所謂ただのさぼりと捉えられてもおかしくない。
「去年の同室者は知っているんだろう?」
「うん、まぁ」
「雪が話さないのなら、同室だった生徒を当たってみるが」
「……なんでそこまでして調べたいの。俺の去年のことなんかどうでもいいだろ」
「どうでもよくないから、こうして聞いている。雪、このままだと今年も出られないかもしれないぞ」
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