80 / 161

第80話

絶対に敵わないと本能が言っている。 例えるならば、喉元に牙を突きつけられて食われる寸前の小動物にでもなった気分だった。 やるならいっそ一思いにやってくれ。そんな自暴自棄の表れでもある。 雷太の唇が怯えている雪の長耳に寄せられた。 「大丈夫。痛いことはしないと誓う」 「……うん」 「気持ちいいことだけ」 「……わかった」 俯く雪の小さな顎を雷太が指で掬い上げる。 くいっと上向きにされた雪の目に、雷太の端正な男らしい顔が近づいてきて、雪はうっすらと唇を開き目を閉じた。 2人の唇が重なって、その時にはもう雷太に対する恐怖も嫌悪もなくなっていた。 唇から伝わる熱、唇を食まれた時の柔らかさ。雷太の唇から感じるのは優しさや愛情の塊だ。 雷太は角度を幾度も変えて、雪をリラックスさせようとしているのか、優しいキスを繰り返す。 「ん……ん……」 雪が鼻から甘い声を漏らし、雷太の着ていたジャケットの胸元をきゅっと握ると、雷太は雪の腰をぐっと自分の下肢に密着するよう引き寄せた。 雷太はその手で雪の丸い尻尾をくにくにと揉み始める。 同時に唇の隙間から舌を差し込まれ、雪は口内を舌で擦られる感覚と、尻尾を弄られ中心にどんどん集まる熱に翻弄され、甘い声で鳴き、腰を前後に揺らした。 「ぃぁ、ふっ……、んっ、んっ……」 くちゅん、と音を立てながら、雪の小さな口の中を舌で愛撫していた雷太の舌が抜かれると、急激に寂しさや物足りなさに襲われて、雪は雷太を一際甘えた顔で見詰める。 熱い頬に、とろんとした眼差しで雷太を見上げれば、雷太もまた情欲に煽られた顔をしていた。 同じ男なのに、全然違う生き物みたいだと思う。 強者に惹かれるのは自分が弱いからなのだろうか。 雪には不思議で仕方ない。 甘く淫らに疼く身体は、間違いなく雷太に反応しているのだ。 「お前は本当に可愛いな。雪……触るぞ?」 可愛いと耳元で囁かれ、中心の熱と質量がぐっと増す。 女子供じゃあるまいし、そんな言葉で浮かれ舞い上がるなんて滑稽だ。 快楽に溺れ、はしたなくみっともない自分を止める術など知らない雪は、雷太の指先から与えられる気持ちよさを、うっとりとしながら追いかける。 雷太の手が雪のシャツの中に下から入り込み、しっとりとした肌を確かめるように上に向かって触れていく。 その手はふっくらとした乳輪を柔く揉み、すでにしこった尖りを更に敏感にさせた。

ともだちにシェアしよう!