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第86話

「お言葉ですが山王会長、個人的な色恋沙汰を公の場で発表するのはどうかと……」 ぎゅっと眉間に皺を寄せ、雷太に意見したのは草食組生徒会副会長の牛島だ。 以前雷太が食堂で雪と接触した時、牛島は雪の身辺に護衛係の生徒を待機させていた。 雪への個人的な感情が牛島にあってもおかしくないと思える。 もしそうだったとしても、譲る気は全くない。 雷太は自分の我の強さを自覚する。 (雪は俺のものだ) 「牛島は雪が他の生徒達からどんな目で見られているのかわかっているのか。万が一ということもある。その万が一が起きてしまってからでは遅いんだ。そうなる前に皆の前で釘を刺そうと思う。それがいじめを助長するとは思わない。はっきりと宣言することで雪の力にもなるし、協力者だって現れる筈だ。元々雪は、明るく皆から好かれる性格をしているだろう。だからきっと大丈夫だ。逆にこそこそと隠す方が反感を買う原因となるんじゃないだろうか。それに公の場で雪とのことを伝えることで教師達も雪のことを今まで以上に注意して見てくれるだろう」 「ですが……!」 牛島が食い下がる。 牛島の言いたいことだってわかっているつもりだ。 目立つことをすればその分 嫌がらせも増えるだろうと危惧しているのだろう。 それはもっともな考えだと思う。 しかし雪はそんなに柔な兎じゃない。 可愛らしい見た目に反して、男としてのプライドは高く、強気な姿勢で弱さを見せない。 きっと雪ならば乗り越えられる筈だと雷太は思う。 「雪はみんなが思っているよりも強い。だから大丈夫だ」 「……そこまで山王がいうので言うのであれば、今回は任せる。だが、今後黒兎に対する風当たりがますます強くなるようだったら、黒兎からは手を引いてもらうぞ」 「……あぁ」 一応返事はしたものの、手を引くなんてとんでもないと雷太は内心毒づいた。 (雪は俺の獲物だ。絶対誰にも渡さない) 「では皆さん始めましょうか。席についてください。今回の司会進行は僕、草食組生徒会書記である山羊(ヤギ)が務めさせていただきます。よろしいでしょうか」 雪のことでヒートアップしてしまった雷太を始め、象山、牛島を落ち着かせようと、草食組の山羊が立候補する形で立ち上がる。 これには誰も異論を唱えなかった。

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