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第90話

「わっ、やめろよ!優也!」 「雪もうじうじしない!ちょっと仲間外れにされたからって、そんなことで学校休んでたらキリないからね!」 ぐいぐいと、雪と優也で毛布の引っ張り合いが始まる。 「でも、あいつら、俺のことエロウサギってバカにするし、俺のことぼっちにさせようと何か企んでるし、この間なんて食堂に行って椅子に座ろうと思って腰下ろしたら、椅子を横から奪われて、俺尻持ちついたんだぞ!めちゃくちゃ痛かったし恥ずかしかったし……!」 「けど!ここで休んだら、それに屈したことになるよ。それってめちゃくちゃカッコ悪い!山王会長という王者にマーキングされたんだよ?だったら堂々としてなくちゃ!仮にも雪は山王会長の彼氏なんだから!」 「か……っ、彼氏……!?」 「そうでしょ?違うの?どんな嫌がらせを受けようとも、雪が山王会長の特別な存在であることには変わりないんだよ」 「……」 雪の毛布を引っ張る力が弱まり、優也はやっとのことで雪から毛布を引き剥がした。 そうだ。優也の言う通りだ。 自分は百獣の王からマーキングされた兎だ。弱いだけの兎に雷太はマーキングなんてきっとしない。 雷太に見合う自分でありたい。こんなところで腐っている場合ではないのだ。 難しいかもしれないが、うじうじ、くよくよするよりも、認めてもらうことの方が大事だ。 雷太ならきっとそうするだろう。 雷太は合同朝会で壇上に上がると優也は言った。 だったら会いに行かなくては。 雪はベッドの上でペタンと座ったまま優也を見詰めた。 「優也ごめん。俺間違ってたかも……。逃げてても仕方ないよな。取り敢えず、朝会には間に合うように行くよ。俺を待ってたら優也まで遅れちゃうから、先に行ってて」 「一人で大丈夫?」 「おう!大丈夫!」 雪は優也の背中を見送って、ベッドからぴょんと飛び降りた。 雷太の顔が久し振りに見たい。 雷太のことを考えて、そわそわとしながら身支度を整える雪だった。 雪が寮を出た時既に、合同朝会の始まる時間を過ぎていた。 途中から参加したら悪目立ちしてしまうな……と、余計な心配事が増える。 しかしそれも自分の弱さが原因だと、雪は自分を叱咤する。 シャツのボタンを上まで留めてブレザーを羽織る。 あんな嫌がらせは些細なことだと自分に言い聞かせ、寮の外へと一歩足を踏み出した。

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