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第94話

「えー、今年の体育祭、競技種目が決定しました。よって肉食草食の生徒会及び、体育祭実行委員は詳細確認の為、明日の放課後視聴覚室へ集まるようお願いします。僕からは以上になります」 象山が壇上を降り、続いて雷太がそこへ上がる。 途端に講堂中しんと静まり返る。 だらけていた肉食の生徒も、雷太がその場にいるだけでその存在感に圧倒され、まるで軍隊にでも所属しているかのようにピンと背筋を伸ばし直立不動の姿勢を取る。 雪も朝会で初めて感じるこの空気にただ事ではない何かを感じ取り、本能がそうしろと言っているのか黒い長耳をピンと伸ばし、身体は勝手にいつでも逃げられるよう緊張感を漲らせる。 (雷太……どうしたんだよ……) 明らかに雷太から放たれる威圧の風が原因だ。 講堂中の生徒だけでなく教師までもが身体を委縮させているのではないか。そう思えるほどだった。 雷太がマイクを手にし口を開いた。 「体育祭については先ほど象山が発表したとおりです。例年通り安全面に気を付けて年に一度の行事を楽しみましょう」 (ん……?言ってることは普通だぞ……) この張り詰めた空気の中、ごく普通の発表内容にずっこけそうになる。 では一体何がこんなに雷太を緊張させているのだろうか。 雪はひたすら雷太を見詰める。一体どうしたのか。雷太のことが心配だった。 「それから、個人的なことになりますが……」 雷太はそこまで言うと、雪の方へ視線を移動させた。 雪と雷太、互いの視線が絡み合う。 「……なに」 何が何だかさっぱりわからない。 けれど雷太は間違いなく、大勢の中のたった一人、雪を見詰めていた。 「私、山王雷太は草食組の黒兎雪君とお付き合いをさせていただくことになりました」 「え……え……えぇっ!?」 どうしてこんな公の場でそんなことを発表するのか。雷太は気が狂ったのかと、雪が目を白黒させている。 もちろん講堂中がどよめきに包まれ、雪は周囲から視線の集注砲火を浴びた。 (なんでっ?なんでなんでっ?こんなところでそれを言って何になるんだ……!?)

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