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第95話
「この学園は草食と肉食で完全に教室も寮も分離されています。そんな中で私は黒兎君というとても素敵な人に出会えました。幸いにも学園内での恋愛を禁止する規則はありません。ですが私たちと同じように互いに思いあえる人がこの学園にいたとしても、種族が違えば交流することすら難しい環境です。ですから私も黒兎君も、今後は両種族間の橋渡し的存在になれればいいなと思っています。以上です」
雷太はマイクを置きその場で一例する。その後颯爽と壇上を降りて行った。
雷太の発言が終わるとどよめきに包まれた講堂中が一旦静まり返り、その後どこからか拍手が上がり、やがて大きな拍手で一帯が包まれた。
雷太の発言に感銘でも受けたのだろうか。
先刻とは打って変わって、雪の近くにいた草食の生徒たちからも、「がんばれよ!」「応援するからな」と声をかけられた。
(さっきまで俺のこと悪く言ってたのに……)
手のひらを返したような周りの反応。
違う……。
これは雷太の威圧の風が起こした現象だとわかってしまった。
実質、雪はここ数日ずっと続いていたいじめのような悪意の中から引っ張り上げてもらったことになる。
しかしこれが仮の恋人じゃなく、正真証明本物の恋人同士であったなら、どうなっていたのだろう。
もしかしたら、誰かがどこかで、雪と雷太を心から祝福してくれたんじゃないだろうか。
仮の恋人。
偽の祝福。
雪の胸にぽっかりと穴が空いたようだった。
雪は久し振りに見ることのできた雷太の顔を直視することなく、朝会の終わった講堂を後にした。
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