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体育祭
パーンッ……と学園中に響き渡る花火の音で目が覚めた。
花火は体育祭実行委員が体育祭当日の朝、開催されることが決定した直後に打ち鳴らすのが習わしになっている。
カーテンを開ければ、きっと窓の外は晴れ渡る青空が広がっていることだろう。
わかっていたが雷太は慌てて身体を起こした。
枕もとの時計を手にとり時刻を確認する。
時計の針は午前6時30分を指している。
「はー……、寝坊したかと思った……」
思わず安堵の溜息が漏れた。
昨夜は雪に煽られ我を忘れるほど盛り上がり、互いが互いをマーキングするという行為に没頭してしまった。
眠った時刻は何時だっただろうか。
寝坊してもおかしくないくらい行為に耽ってしまったことを思い出す。
雪が白い肌をピンクに染めて、もっともっとと愛撫を強請ってきたことが忘れられない。
それに……。
「らいた……すき……」と。
雪は間違いなくそう言ったのだ。
例え寝言だったとしても、本心から出た寝言かもしれない。
にやつきそうになる頬を思わず手で押さえる。
その真偽をどうしても確認しなくては。
「ん……」
雷太の隣で素っ裸の雪がもぞもぞと動いた。
「雪、起きろ。体育祭だ」
「んー……、あと5分……」
「ダメだ。雪」
雪の華奢な肩に手をかけてゆさゆさと揺すってみる。しかし雪は寝ぼけているのか、「やだ、やだ」と長耳だけをちょこんと出して布団の中へと潜り込む。
声も仕草も可愛らしいことこの上ないのだが、昨年のことを思うと、雪を早く起こしてやりたいと気が焦る。
雷太はそっと布団を引きはがし、雪の長耳にキスを落とす。
音を立てて3回キスを繰り返すと、雪はやっと瞼を開いた。
「これ……夢……?」
「いや、現実だぞ。雪、体育祭だ。今日は敵同士だな」
「……っ、まじで……?」
雪は体育祭のことよりも、裸である自分の姿に赤面し慌てているようだった。
白い肌に所有の印をいくつもつけた。
所々ぽつぽつと赤くなっているのは雷太が吸った痕だった。
横目でちらりと盗み見る。
前後不覚になるほど夢中になり、やり過ぎた感が否めずに、心の中で謝罪した。
それにしても昨夜の雪は驚くほど大胆で積極的だった。
それに、もしかしたら自分は愛の告白をされたのかもしれない。
そう思えば雪が赤面する理由も何となくわかる。
「雪、昨夜は素敵な夜をありがとう」
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