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第105話
雪の唾液が仄かに甘く、雪のほっそりとした体から立ち上る体臭が、綿菓子を連想させた。
雪は雷太の舌を押し退けることなく、ぎこちなく拙い動きでそれに応える。
絡まる舌の動きまでも可愛らしく、雷太は堪らず雪をきゅっと抱き締めた。
互いの素肌が重なって、体温が溶け合う。
雪は艶やかな黒い長耳を、ピクンピクンと動かしながら、肌をピンクに染めていく。
(これはだめだ。これ以上はこっちの理性が保たない)
これ以上キスを続けたら、雪の体の隅々まで触れてしまいたくなる。
今日は大切な日。体育祭だ。
今はそんなことをしている場合ではないと、名残惜しくも雪の唇をペロリと舐めとり顔を離した。
雪の吐息がやはり甘い。
……可愛い。
「雷太のキス、好きだ。気持ちいい。また、してくれる?」
「っ……」
ピンクの肌で上目遣い。可愛らしいキスのおねだりに思わず息を飲む。
頭のネジが2、3本吹っ飛んでもおかしくない、雪の性的破壊力。
「なぁ……、雷太?」
「そうだな。また後でな」
「うん」
雪が微笑む。
ふんわりと、本当に綿菓子のようだった。
自分のキスがこんな風に雪を微笑ませるのかと、雪に対する愛しさが泉のように湧き上がった。
雷太はジャージに着替え、雪を中央棟の食堂まで連れていき、そこで予め連絡済みだった優也に引き渡した。通常は昼しか開いていない中央棟の食堂だが、体育祭の日に限り、朝から特別に営業している。
無料でお握りを配っているのだ。
お握りの無料配布はたくさん食べて精をつけ、全生徒が体育祭に備えるための学園側の計らいだ。
ただと聞いてもらいに行かない者の方がすくないだろう。この日の食堂は芋洗い状態だ。
服装も部屋着の者もいれば体操着に着替え終えている者もいて、この時間帯の決まりは特にない。
だから雷太が部屋着の雪を連れて共に現れても変に目立つことはなかった。
「じゃあな、雪。また後で」
「うん、またな」
昨夜の雪の不在を取り計らってくれたことを優也に感謝し、礼を言って雪とはそこで別れた。
雪と優也は揃ってお握りを待つ生徒の群れの中へ消えていった。
雷太を始めとする生徒会役員達は、朝の見回りから体育祭が始まる。
雷太がグラウンドへと足早に向かっていると、後方から紅と烏合、屈狸も現れ、一同が合流した。
「おはようございます」
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