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第107話

それぞれの動きを見守って、雷太も朝一番の大仕事がこれから始まる。 生徒会の役割は、主に実行委員のサポートになるのだが、その実態は裏で風紀を乱す者を取り締ることだった。 肉食も草食も行事のある日は、荒々しく血の気の多い者が増える。 これを野放しにしていては怪我人続出で体育祭そのものが中止となりかねない。 暴走してしまう者を監視するのが役目ではあるが、気になるのは草食組にいる雪のことばかりだ。 しかし雪のことばかり気にしてもいられない。 雷太はグラウンドと教室棟、寮の中間となる林の真ん中で、一番高い木に登る。 澄んだ空気の中、周囲を見渡し、腹の底に力を籠めた。 ビリビリとした空気が雷太を包む。 雷太はここ一番とも思える威圧の風を身に纏い、息を大きく吸い込んで、林一帯に響き渡るような咆哮で、自分の存在を知らしめた。 俺はここでいつでも見ているぞと、威嚇したのだ。 どれほどの効果があるのかいまいち実感できないがこれでもまだ風紀を乱す者がいるのなら、あとは実力行使で大人しくさせるのみ。 雷太は咆哮で一気に伸びた爪と牙を見て、フンと鼻を鳴らし細長い尻尾を左右に揺らした。 覚悟のある奴はいつでもかかってこい。 そんな気分だった。 開会式が始まった。 東側に草食組、西側に肉食組がずらりと並んでいる。 野球のスタジアム1個分は優にある広大なグラウンドに肉食、草食の生徒が一同に会する。 身体能力を惜し気もなく、思う存分使って良い特別な日だ。 皆の気分が高揚するのもよくわかる。 雷太達肉食組生徒会も、耳や翼、尻尾をうずうずとさせ、この日を楽しみにしていたようだ。 開会式が終わり、それぞれクラスのテント下へと移動を始めた時、雷太はこれに乗じて象山の元へ向かった。 「象山、話がある。少しいいか?」 「あぁ。場所を変えた方がよさそうだな」 象山は雷太の深刻な表情を見て、すぐに頷いた。 二人はグラウンドから外れ、林の入り口で立ち止まった。 「ここなら紅の管轄内だ。誰もいない」 「そうか。で、何があったんだ」 「実は……」 雷太は鬣犬の件について説明する。 雪を慰みものにするための賭けが行われようとしていること、そして雪が昨年参加出来なかったこの体育祭を心の底から楽しみにしていたこと。 「……というわけなんだ」 「事の経緯は把握した。だが、山王が黒兎にしたマーキングは有効なんじゃないか」

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