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第108話
「それが、ハイエナ達には効果がないらしい」
「それはまずいな」
「あぁ。だからこうして協力を求めている」
「わかった。黒兎には牛島の仲間をつけておこう。脚の速さとパワーは肉食に劣らない猛者揃いだ。だがハイエナが相手となると……」
「個体それぞれのスペックが高く奴らは強い。要注意なのは強堅な顎だ。骨をも噛み砕く力で噛み付かれれば怪我人が出ること必至だ。本当は俺がずっと雪についてあげたいが、そもそも組が違う。それに生徒会としての仕事もある。ずっと見ていることはできない……。何かあればすぐ駆け付ける。それまで雪を宜しく頼む」
金の耳を力なく垂らし、雷太が象山に頭を下げた。
仮の恋人として、肉食組会長として、色々な思いがそこには詰まっていた。
「顔を上げてくれ。困ったときはお互い様だ。パワーだけなら俺も誰にも負けない自信がある。いざとなれば参戦するつもりだ。その前に黒兎をなるべく一人にしないよう心掛けるよ。それだけでもかなり違うだろう」
「そうだな」
雷太と象山はそこで拳をぶつけ合い、その場で別れた。
雷太は歩きながら先日の朝会で雪が鬣犬に肩を抱かれながら講堂に入ってきたことを思い出した。
一方的に雪が絡まれたのだろうと容易に想像できた。
すぐに教師に引き剥がされ、何もなかった筈なのだが、あの時の光景が何故か今になって頭から離れない。
有能な草食組生徒会を味方につけたが、雷太の不安は消えないままだった。
道すがら選手が集合する入場門の横を通った。
一番始めの競技である100メートル走に参加する生徒達が準備運動を終え入場門に集合している。
その中で長い黒耳がひょこひょことしているのに気が付いた。
「雪!」
「あ、雷太!」
雪だ。長耳をふさふさとさせて、ぴょんぴょんと跳び跳ねている。
「出るのか?」
「うん。絶対一位とるから見てろよな!」
ぴっと人差し指を立て、雷太に向けて笑顔を見せる。
よかった。本当に楽しそうだ。
「ああ」
雪は雷太に手を振って、入場門を潜って行った。
雷太はその場で100メートル走を観戦した。
皆俊足揃いで見ているだけで、気が昂る。
順位毎に点数が割り振られ、最終的にはトータルの点数で勝敗が確定するのだが、肉食も草食も負けていない。
雪の番が回ってきた。
コースのど真ん中に雪はいた。
赤いランニングに同色の短パンを身に付けている。
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