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第109話

肌が白くて赤がとてもよく映える。 ほっそりとした選手が多く、雪はその中でも一際小柄だった。 「ようい」の合図で両手を地に付け腰を下ろす。クラウチングスタートの構えだ。 パンッと鉄砲の音が鳴り響き、スタートを切った。 出だしから雪の一歩は伸びが大きい。 脚の回転も早く、50メートル地点で既に体一つ分他の選手の前に抜き出ていた。 速い。雷太は目を見張った。 負け知らずの自分でも敵わないかもしれない。 風の抵抗さえも味方につけているんじゃないかと思えるほど身のこなしは軽く、俊敏に、雪は宣言通り一番でゴールテープを切った。 雪は清々しい表情でキラキラと輝いているように見える。 「雪……、やった、よくやった」 雪の浮かべた満面の笑みが雷太の涙腺を刺激した。 本当に雪が幸せそうでよかったと、じわりと熱をもった瞼を押さえる雷太の心境は、最早親心に近いものがある。 「会長、見回り代わってください。僕、次400メートル走に出るので」 「は……紅か。あぁ、わかった」 感慨に浸る暇などないのが、生徒会の実情である。 雷太は紅に肩を叩かれ、持ち場へ向かった。 死角となる場所を隈無く歩く。 例年サボりのスポットとなっているのが、あまり使用されることのない第三体育倉庫だ。 ここには、備品の予備が置かれている。 外側から鍵はかけられているものの、どういうわけかこの中でサボっている生徒がいたりするのだ。 雷太はジャージのポケットから鍵を取り出しその扉を開けた。 「見回りだ。誰もいないな……?」 耳を澄まし、くんっと鼻を鳴らす。 カサッと何かが落ちる音がして、雷太は瞬時に威圧の風を見に纏った。 「誰かいるのか」 倉庫内の灯りを点けたが誰もいない。 しかし匂いで誰かがいた痕跡があるとわかる。 どうやってここに侵入したのだろう。小さな小窓が一つあるが内側から鍵がかけてある。 だとすると、誰かが鍵を持って開けたということになる。 用事があって備品を取りに実行委員の誰かが来たのかもしれない。 雷太がそう自分を納得させ、踵を変えそうとしたその瞬間、床に落ちている紙に気付いた。 ちいさなメモ紙だった。 その紙を見て、雷太は顔色を変える。 そこには騎馬戦というタイトルで、鬣犬の名前と恐らくその手下と思われる者の名前が連ねて書いてある。 その下にはオッズと記され、4とか5とか数字が書かれていた。 「なんだこれは……!!」

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