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第110話
雷太の手が怒りでぶるぶると震える。
紙を見て一瞬で把握した。
これは雪を誰が手籠めにするのか、それを決めるための賭けが行われている証拠だ。
(絶対に許さない……!!)
炎のような激しい怒りで雷太の眼前は真っ赤に染まりそうだった。
この紙がここに残された理由はよくわからない。
しかし故意に残す理由がない。
計画を阻止されては興醒めだろう。
雷太はすぐに思考を巡らせた。
考えられるのは、騎馬戦に出場する選手の中にこの馬鹿げた火遊びに興じる者がいるということ。
そして雪に手をかけるならば、騎馬戦以降の団体競技中だ。
ジ雷太はャージのポケットから折り畳まれたプログラムを取り出して騎馬戦の後を確認する。
「学年対抗リレー……?違うな。じゃあ、この後の合同交流種目か……?」
今年新たに追加された種目だ。
ダンスをすることが決まっている。
肉食と草食、互いが距離を取りながら、実は仲良くしてみたいと思っている者がこの学園には沢山いる。
きっとこの種目は全員が楽しみにしているのではないだろうか。
そう考えると、気を付けなければいけないのは、ダンスの時間だ。
雷太の憤怒で空気が揺れる。
林の木々に止まる鳥たちが一斉に逃げていく音がした。
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