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体育祭2
100メートル走で注目を浴びた雪だが、出場する個人種目全てが雪の独壇場だった。
今ジャンプすれば、雲まで手か届きそうな勢いだ。
誰にも負けない走りを大勢の前で見せつける。
楽しい!なんて楽しいんだろう!
雪は入学してから今日まで、今、この日が一番楽しく、有意義に過ごせていると感じていた。
「雪!また1位獲ったの!?すごいね!」
「まぁまぁ落ち着けよ、大したことないって、へへ」
テント下へ戻ってくる雪を、優也を始めとするクラスメイト達に出迎えられて、雪は終始頬が緩みっぱなしでご機嫌だ。
ただ個人で成果を上げるだけでなく、草食組にどんどん点が加算され、それに自分が大いに貢献しているのかと思うと非常に気分がいい。
こんなに楽しい行事にどうして去年は参加出来なかったのか、とても悔やまれる。
「優也は何に出るんだ」
「僕ね、借り物とパン食い競争。ひたすら走るよりこっちの方がまだましというか」
「そっか。でもまぁ、それぞれ向き不向きがあるもんな。俺は借り物競争とかテンパっちゃうタイプだよ」
「確かに、雪慌てそう」
雪と優也が顔を見合せ、ふふふと笑う。
すると、次の競技にに出場する選手を召集するアナウンスが流れ、優也が立ち上がった。
「あ、次借り物だ。じゃあ行ってくるね」
「うん。がんばれよ!」
優也の細身で頼りない背中を見送って、雪は応援側に回る。
優也が一番よく見えるであろう位置まで移動することにした。
雪が動くと、背後で誰かが一緒に動く。
鈍い雪でもおかしな気配を察知して、顔をしかめた。
誰かが自分を監視し、しかも尾行している。
ばっと勢いよく後ろを振り向くと、確かにそこには数名の生徒がいるのだが、その中の誰が雪の後を追っているのか確定できない。
「はー……何なんだよ。まぁ邪魔されないだけいいか」
それが誰なのかを特定するよりも、雪は優也の応援を優先させた。
よく見える第一コーナーの借り物メモが置いてあるところまで移動して、雪は声を張り上げた。
「優也ーっ!がんばれーっ!」
雪がぴょんぴょんと跳ね上がる度、耳がふさふさと揺れる。
その姿を優也はすぐに見つけ、雪に向かって控え目に手を振った。
第一レースがスタートする。
俊足の選手は殆どおらず、雪から見れば本気で走っているのかと疑いたくなるレースだった。
しかし借り物競争の醍醐味はそこではない。
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