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第117話

「棒倒しの準備で体育倉庫から棒を運び出そうとして、何かの拍子に立てかけてあった棒が一斉に倒れ、その棒の下敷きになったんです」 「嘘だろうっ、雷太がそんな……」 まさか雷太がそんなドン臭いことなどする筈ないと思いたかった。 しかし本当のことならば一大事だ。すぐに救援を呼ばなければならない。 雷太が棒の下敷きになっている姿など想像したくもないし、実際できなかった。 「じゃ、じゃあ俺、助を呼びに行ってくる!」 「待ってください!救援は俺が呼びにいきます。それより黒兎さんは山王会長のところへ一刻も早く向かってください!会長はうわ言のように、黒兎、黒兎……と呼び続けています!!早く行って会長の容態を見張っていてください!場所は第2体育倉庫です!」 あれ?と頭の中で引っ掛かりを覚える。しかし追及している暇はなさそうだ。 「……わかった」 そう言いながら肉食の生徒は待機場所となっているテント下へと向かっていく。 そこで救助要請をするつもりなのだろう。 そっちは任せることにして雪は言われた通り、雷太が待つ第2体育倉庫へと向かった。 落ち葉を踏みしめ地面を蹴り上げる。 本当に倒れているのなら、そこから雷太を助けてあげたい。 その苦しみから雷太を救いたい。 その一心で、雪は走り続けた。 第2体育倉庫の前に着く頃には、短パンから伸びた素足が草木で擦れたのか小さな傷だらけになっていた。 しかしその痛みを感じないくらい、雪の神経は雷太へ一直線に伸びている。 雷太は大丈夫なのだろうか。 考えれば考えるほど心拍数は上昇し、雪の顔からは血の気が引いていく。 しかし早急に安否を確認しなくては、と雪は倉庫の扉に手をかけた。 ゆっくりと扉を開けた。 「……?」 思いがけず、倉庫内は電気も点いておらず真っ暗だ。 「雷太……?雷太、大丈夫か?……生きてる!?生きてるなら返事して!!」 返事がないことに焦りが生まれ、雪は慌てて壁沿いに手を這わせた。 スイッチを押して室内の明かりを点ける。 「……っ!」 雪は驚きと共に、嗅ぎなれない肉食獣人達のフェロモンを思い切り吸いこんで、恐怖に慄いた。 自分の強気な思考とは裏腹に脚に力が入らず腰が抜け、ぺたんと尻もちを付いた後ろで扉の鍵がカチャンと音を立てて閉まる。 そこには雪を取り囲む肉食組の生徒達が5人。 雪を見てにやにやと厭らしい笑みを浮かべていた。

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