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第118話
「はい、景品ゲット~!」
雪の後方、後ろ手に扉と鍵を閉めた生徒が声を上げる。
雪は思わず振り返る。
声までもが小刻みに震えた。
「なんだよ景品って……、あ!お前、さっきの……」
そこには先刻雪に雷太が棒の下敷きになったと伝えにきた生徒がいた。
「残念でした。ここに会長はいませーん」
「は……?」
げらげらとここにいる全員が笑う。
何が可笑しくて笑うのか、どうして自分をここへ連れてきたのか、なぜ自分を取り囲むのか。
嫌なことばかり考える。
目付きも、匂いも、あの時にそっくりだ。
この既視感はただ事ではない。
雪はずっと以前に親友だと思っていた肉食獣人に、牙を突き付けられたことを思いだし、震える手で頸動脈の辺りを隠すようにして押さえる。
自分はきっと、このままここで組み敷かれ、喉元を噛みきられるのだ。
そうなる前にどうにかして逃げ出さなくてはいけない。
(考えろ、考えろ、雪……)
恐怖の中、現状を打破するためにまず情報を集めるのだと雪の本能が告げる。
「俺を……、どうするの」
「だから景品なんだって。俺らは賭けをしてるわけ。この後やる3年の騎馬戦。この中で一番成果を上げるのは誰ってな」
取り囲むうちの一人がノートを破りとったような紙を広げて雪に見せながら言った。
坊主頭にアルファベットでMという文字の刈込を入れた、見るからに素行の悪そうな奴だ。
景品とはどういうことだ。
自分は物じゃない。
「意味が、わからない……。何する気……」
「何って、なぁ」
雪を騙した一人を含め全員がぎゃははと下卑た声で笑い出す。
(何が可笑しいんだ……)
雪の頭で警報が鳴る。
自分はこれから、ここでこいつらに殺されるのかもしれない。
「取り敢えず暴れられても面倒だし、縛っておくか」
「だな」
どこから持ってきたのか髪を後ろで縛った長髪の生徒がナイロンのような雑誌や新聞を束ねるのによく使う紐を持って雪の側まで歩み寄る。
紐で首を絞められるのかと、雪は咄嗟に両手を首に押し当てて、垂れ下がった長耳で、頭をふるふると横に振った。
「ぷっ。かーわいい、首でも絞められると思ったのか」
「……違うのか」
「そういう趣味のやついる?いねーよな。俺らそんなことより気持ちいいことしたいんだよね」
「え……どういうこと」
雪が首をぐっと押さえたまま問い返す。
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