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第119話
「ここまで言ってもわかんねーのか。お前、山王会長とヤったんだろ。俺らも同じことがしたいわけ」
「……え。……マーキングってこと?」
マーキングは所有の証。恋人などのパートナー間で成立するフェロモンの植え付けだ。
しかし雪は既に雷太からマーキングされている。
雷太の強い雄の匂いは、他の肉食獣人から雪を守ってくれると聞いた。
こいつらも自分達の精を自分の肌や粘膜に塗りたいのかと雪が首を傾げる。
すると、跳び箱の上に座っていた見掛けは普通の生徒が言った。
「俺達ハイエナには他のやつらのフェロモンなんて関係ないんだよね。喰いたいものは何でも喰う。それが残り物だろうが、おこぼれだろうが関係ない。だから黒兎、お前についてる会長の匂いも俺達には効かない」
「効かない……ってことは、お前ら俺を性的な目で見てるってやつか!?」
こうして雪が情報を集めている間にも、雪の手足に紐がかけられぎゅっと縛られる。
周りの2人がご丁寧にも積み上げられたマットを一枚下ろし、雪をそこへ転がした。
「ってぇ!なんなんだよ!」
声を上げたが、マットの上で然程痛みは感じなかった。
やっと事情が飲み込めた。
雪は殺されるために連れてこられたのではないとわかり、いつもの強気も回復する。
体の震えも止まった。
しかし肝心の手足は縛られ、どうにでもしてくださいと言わんばかりに、最早雪はまな板の鯉だ。
「性的な目?ははっ、わかってんじゃねーか。その通り。どうせもう会長とヤったんだろ、セックス。別に俺らとヤったって減るもんじゃなし、いいじゃねーか」
「ふっ、ふざけんな!大体俺、雷太とセックスなんてしてないからな!!」
「してない?なんで?なんでマーキングだけで済んでんの?普通そこまでやったら我慢なんかできないんじゃね?会長って僧侶かなんかかよ。煩悩には負けません!ってか?」
ハイエナの生徒達がまた笑う。
雷太のことを馬鹿にして笑っている。
雪はそれが許せず、怒りで頬をピンクに染める。
「お前ら雷太のことを笑うな……!雷太はお前らみたいな欲にまみれた汚いハイエナとは違う!」
「じゃあ聞くが、マーキングまでした相手に手を出さないなんて同じ男として考えらんねーんだけど、なんで?」
M字の刈込み頭がバスケットの中からバレーボールを取り出して壁に叩き付けながら言った。
「それは……」
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