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黒の純真 金の情動

「雪!!」 雷太の目に飛び込んできた雪は裸に剥かれ、その体は血が通っているとは思えないほど真っ白だった。 雷太のつけた赤い愛情の印が紫色に変色している。 怒りよりも先に焦りと恐怖が生じ指先が震えた。 「俺たちはまだ、何もしてねぇよ。ほんとだ!こいつが勝手に息を止めたんだ!自殺する能力があるんだって……」 「うるっせえ!このゴミくずどもが!!俺の了解もなしに勝手なことしてんじゃねぇ!!」 「ひっ、鬣犬先輩っ……!」 雷太と共に第二体育倉庫を訪れた鬣犬が、雪に跨っていたM字の刈込み頭の胸倉を掴み、勢いよく投げ飛ばす。 抵抗する間もなく吹っ飛ばされたその生徒はガラガラと派手な音を立てながら、ぶつかった衝撃で倒れてしまった跳び箱の中に埋もれてしまった。 鬣犬は怒りに任せ手当たり次第に自分の手下を殴り飛ばす。 その傍らで雷太は白く冷たくなった雪の胸に耳を当てた。 とくん、とくんと、ゆっくりではあるが力強く規則正しい心音が聞こえてくる。 「……生きてる。紅、ここの後処理は任せていいか?」 「もちろんです。早く黒兎さんを医務室へ」 「あぁ」 雷太は雪の衣服を手早く直し、この場を紅に任せ雪を横に抱きかかえる。 倉庫を出ると学園中央棟にある医務室へと全速力で走り出した。 草木が脚に刺さろうが、葉っぱで顔が切れようがかまわない。 雪を元に戻さなくては……! 生徒会の仕事にかまけて雪を全然見ていなかった。 ダンスの前後は最大限の注意が必要だとわかっていたのに。 草食の牛島が見張ってくれていると象山から聞いて気が緩んでいたのだ。 烏合から雪を狙う者がいると、前情報をもらっていたにも拘わらず、だ。 まさか牛島の監視が外れた瞬間に雪が連れ去られていたとは。 雷太は自分を呪いたくなった。 草食の小鳥が雪を探していたのが、雪の失踪を知るきっかけとなった。 雪は最終種目である体育祭の花形、選抜リレーの選手だったのである。 選手を招集するアナウンスがあっても雪は集合場所に現れず、前競技であった騎馬戦が終わっても雪がそこへ来ることはなかった。 さすがにおかしいと皆が思い始めた。 雪がいないとわかり、草食組生徒会は背筋が凍る思いだっただろう。 雷太も選抜メンバーの一人だったが、それどころではない。

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